2019年4月1日から働き方改革関連法という法律が順次施行されているという話は皆さんもご存知かと思います。いわゆる“働き方改革”と言われています。
この中で大きく焦点とされているのが7点あります。
働き方改革関連法
(1)労働時間に関する制度の見直し
(2)勤務間インターバル制度の普及促進
(3)産業医・産業保健機能の強化
(4)高度プロフェッショナル制度の創設(高プロ)
(5)同一労働同一賃金
(6)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
(7)行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
引用:マイナビニュース
この記事では、この中で”労働時間に関する見直し”の項目の一つである時間外労働の上限規制について私の友人談を交えて伝えたいと思います。
労働時間って決まっているの?

今回の話をする前に皆さんご存知かと思いますが予備知識として2種類の労働時間を説明しておきます。
・所定労働時間:会社が契約で定めた労働時間。こちらは会社が決めているので、会社によって契約内容が異なるかと思います。
・法定労働時間:労働基準法第32条で定められた労働時間。こちらは、法律で定められているもので、下記のようになります。
法定労働時間
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
このように、実は労働の時間って二種類あるんです。
私の友人談ですが、有給休暇で1時間お休みしてから出社して2時間残業をしたのですが、割増賃金での支払いはなかったそうです。これは彼の会社での所定労働時間は8時間だったからです。
※所定労働時間は休憩時間を引いた時間となりますので、実際の労働した時間としては7時間となります。
そのからくりについて説明しますと下記のようになります。
まず、友人は会社との契約(所定労働時間)では8時間となっております。会社の定時の時間は9:00~17:00の合計8時間です。
上記にも書いたように、休憩時間の1時間引かれますので実際の労働時間は7時間となります。友人は有給休暇で1時間休みました。その後友人は1時間遅れで会社に出勤し、定時まで仕事を行いました。そして、仕事が終わらなかったので2時間残業することにしました。
所定労働時間-((定時の業務時間-休憩時間)-有給休暇+残業時間)の数値によって法定時間内労働なのか、法定時間外労働なのかが決まるのです。
ここの数値が0もしくは0より低かった場合は“法定時間内労働”となります。つまりは割増賃金でなくても問題ないということになります。
ここの数値が0もしくは0より高かった場合は“法定時間外労働”となります。時給換算で25%以上50%以下の範囲の割増賃金で計算し支払うこととなります。
これを元に、友人の例と示しますと8-((8-1)-1+2)=0となります。
そうです。0なので友人は”法定時間内労働”となるため割増賃金で支払いはなかったことになります。
残業時間を定める36協定って?
※これから説明するのは、旧36協定時代の話になります。
先程説明した時間外労働時間ですが、よく会社は社員に残業させる時間は好きに決めていいと思われがちです。世の中では残業代を支払わない会社、法律を守られない会社はブラック企業と言われています。
“ブラック企業”は法律的にはきちんとした定義はありませんが、皆さんがよく聞くのは労働者を酷使し、使い捨てにする企業や残業代を支払わない企業のことをいうかと思います。本当にそうでしょうか。友人の会社は上記とは違いました。
友人の会社では残業無制限で、もちろん休日出勤に関しても無制限でした。
会社はすべて残業代を払っているので問題ないという認識で友人は年間平均で約100時間の残業をすることになりました。休日出勤に関しても、連続勤務約20連勤と聞いております。会社はその残業に関して、全て支払いをしています。
この会社はブラック企業だと思いますか。残念ながら、この企業は法律的には問題スレスレではあるものの問題ないということになります。
※こういう企業のことを上記に示すブラック企業ではないので、スレスレの企業ということで今回はグレー企業とでも定義しておきましょう。
これについては下記の36協定というのを説明していく必要がありますので、説明していきます。
36協定
労働基準法36条に基づく労使協定で、「さぶろくきょうてい」と呼ばれることが多い。会社が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間外労働を命じる場合、必要となる。労組などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出る。届け出をしないで時間外労働をさせると、労働基準法違反(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)となる。
引用:コトバンク
「なんだ、こんな法律があるならグレー企業もブラック企業として摘発されるべきだ!!」と思うでしょうが、この36協定に”特別条項付き協定”を追加すると、あら~不思議、問題ない企業に早変わりします。
◇原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
◇限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
◇一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続
◇限度時間を超える一定の時間
◇限度時間を超えることができる回数
を定める必要があります。
引用:改正労働基準法
上記の”特別条項付き協定”では会社が限度時間である1ヶ月45時間を超えても時間外労働を行わせることができる規定があります。
友人の会社はこれを適用することで、残業時間を上限なしの青天井にしていたそうです。グレー企業は残業代をしっかり払えば問題ないと思いがちです。友人の会社もそういう会社でした。
でも、そんなことはありません。本当にそれでいいのでしょうか。良いわけがありません。そこで出てくるのが次に説明する法改正した“新36協定”となります。
法律の改正による新36協定がもたらす影響って?

さて、今回新しく改正された新36協定はどのように変わったか説明していきます。従来の36協定というのは、特別条項付き協定を追加すると残業時間の上限はなくなると先程説明しました。
これがあるからグレー企業が横行しているとさえ思っていましたが、国も流石にこれは問題だと思ったのか今回新たに法改正された”新36協定”では上限が追加されることになります。
新36協定
労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働
含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
(※)自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外あり。研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、適用除外。
引用:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要
つまり改正後は、特別条項付きを結んでいたとしても休日労働を含んで2〜6ヶ月間の複数月でいずれかの平均が80時間を超える。又は、1ヶ月100時間、年間720時間を超える時間外労働はできなくなるということになります。
そうです。国はやってくれたのです。グレー企業をブラック企業として認識できるようにしたのです。これからは、友人が働いているグレー企業もブラック企業定義になります。
友人の会社はこの”新36協定”によって会社自体は大きく変更することとなりました。今までの管理していない残業時間を徹底管理し、残業時間を一ヶ月45時間未満にすることが会社側から発表されました。
これは喜ばしいことかと思いますが、友人の会社の同僚達はこれに反発しました。
「残業時間なくなったら、生活ができなくなる!!」などの不満が多く吐き出されることになりました。これに困った会社側は全社員の給料を大幅にアップすることにしました。
これでやっと安息な日々を過ごすことができると安堵した友人でしたが、彼にとってとても悲しい出来事がおきます。突如会社側より従業員の退職勧奨が発表されます。全員呼び出され、残っていい人と残ってはいけない人が面談で告知されます。
つまり、実質はリストラです。
幸い彼はリストラ側に含まれていませんでしたが、彼の最も信頼できる仲間は対象者となり退職することになりました。友人はその時、「世の中は法律を改善してもどうにもならないこともあるのだな」と悟ったそうです。
まとめ
ここまでの内容をご覧になれば、わかるかと思いますが従来の36協定というのは特別条項付き協定を追加すると残業時間の上限はなくなり友人の例を出すと残業時間は年間平均100時間ほどになる可能性があります。
そこで、国はこれでは流石に駄目だと考え、法改正を実施し”新36協定”では特別条項付き協定を追加したとしても残業時間に上限ができました。
これはとても良いことで”働き方改革”と呼ばれる一連の改正案の中でも大きく注目されているほどです。これによって労働者の身体、精神は今までに比べ大きく改善されるという効果がもたらされると予想されます。
しかしどんな良いことでもメリットだけではなくデメリットもあります。友人の会社は法改正によって、残業時間を管理する必要があり、それによって従業員の年収が大きく変化されることが反発の原因となりました。
従業員の年収アップを確約した友人の会社ですが、その犠牲として彼が最も信頼していた仲間が解雇されることになりました。
ここから言えることは、上記にも書きましたがどんな良いことでも裏では誰かが損しているということです。
ちなみに、友人は未だにその企業で働いているそうです。


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