久しぶりに会った友人Bくんと近況報告をしていたらこんな話になりました。




労働基準法では、時間外や休日、深夜の労働に対して割増をして残業手当を支払わなければならないとされています。しかし、それにもかかわらず、守られていないということも多いのです。
以下の記事で書いていますが、会社側はあらゆる手段をとって少なく見積もろうとしていることさえあります。それでは、一生懸命働いていても割に合わないですよね。
残業手当が少ないと感じたことがある方はきちんと計算していますか。また、正確に支払われていないというのを知っていながらそのまま放置していませんか。「そもそも給与明細すらちゃんと目を通してないし」なんて方もいるかもしれませんね。
当てはまる方は今すぐチェックしてください。
未払いの存在や金額を知るためにも計算しておくことは必須です。その際には、割増率というものを理解していなければ話になりません。この記事でおさえておきましょう。
Contents
残業手当は割増率を用いて計算できる!

時間外や休日、深夜の労働に対して、一定割合をプラスした賃金を支払わなければいけないのですが、この一定の割合のことを割増率といいます。
会社は労働者に対して、以下の表で示す割増率を1時間分の賃金に掛け合わせて残業手当を支払わなければなりません。
労働条件 | 割増率 |
時間外労働(法定内残業) | 1倍 |
時間外労働(法定外残業) | 1.25倍 |
法定休日労働 | 1.35倍 |
法定時間外労働(月60時間超え) | 1.5倍 |
深夜労働 | 0.25倍 |
時間外労働+深夜労働 | 1.5倍 |
休日労働+深夜労働 | 1.6倍 |
時間外労働(月60時間超え)+深夜労働 | 1.75倍 |
表だけみてもイメージしにくいかもしれませんね。ですので、詳細を3つに分けて説明していきます。
時間外労働
時間外労働は大きく2種類です。法定内残業だと、割増なしですが、法定外残業では1.25倍の割増になります。実はこの違いを理解しておかないと、かえって多く見積もりすぎてしまうことも考えられるので、要注意なのです。
- 法定内残業は就業規則上の所定労働時間を超えたが、法定労働時間を超えていない残業のこと
- 法定外残業は1日8時間1週40時間の法定労働時間を超えた残業のこと

例えば、10時から18時(休憩1時間)の7時間が所定労働時間で、10時から21時まで勤務したら、18時から19時は法定内残業なので割増なしで1時間分の賃金が発生します。そして19時から21時までは法定労働時間を超えているので、1.25倍の割増となります。
また、大企業においては、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えている分の割増率は1.5倍です。
「大企業だけずるい。私だって同じくらい一生懸命頑張っているはずなのに!」と思う方も中にはいらっしゃるかもしれないですが、2023年4月から中小企業でもこれが適用されるみたいですよ。
法定休日労働
労働基準法における休日に働いた場合の割増率は、1.35倍となります。労働基準法第35条では、「休日は週に1回あるいは4週間を通して4日以上」を付与しなければならないとなっています。これが法定休日です。
休日には所定休日というのもあります。こちらも違いを把握しておくようにしてくださいね。
所定休日は、会社で定められている契約上の休日のことです。所定休日に仕事をしても休日労働の割増はつきません。なんだかややこしく感じてしまいそうですが、冷静に考えればいたってシンプルです。
例えば、週休2日(土日)となっていて、土曜が所定休日、日曜が法定休日の場合には、日曜に仕事をした場合に、1.35倍の割増がつきます。つまり、土曜は休日としてカウントしないというだけのことです。


深夜労働
午後10時から午前5時までの労働のことです。労働基準法では、労働者の心身の健康を維持するため、深夜時間帯の労働に対して制限をかけています。
深夜労働の割増率は、法定労働時間の内外を問わず上乗せするものとなっているため、1.25倍ではなく、0.25倍となっているということを念頭においておきましょう。
例えば21時から朝の5時まで働くと、22時から朝5時までの7時間に対して、1時間分の賃金に1+0.25倍の割増が付与されます。

また、時間外の深夜では、1.25+0.25=1.5倍、休日の深夜だと、1.35+0.25=1.6倍、月60時間超え時間外の深夜は、1.5+0.25=1.75倍の割増が付与されるという仕組みになっています。0.25をプラスするだけですね。
割増率を用いた残業手当の計算方法
では、具体的にどうやって算出すればいいのかを紹介します。
計算式と方法について
残業手当=1時間分の賃金×割増率×残業時間
1時間分の賃金は時給のことです。日給制や月給制においては以下のように求めます。
1時間分の賃金=1日分の賃金÷所定労働時間
1時間分の賃金=月の基礎賃金÷所定労働時間
月給制では、月の基礎賃金を求めなければなりません。その際、以下を除外することになっています。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
引用:労働基準監督署対策相談室
計算にこれらの手当を含めないのは労働と直接的な関係が薄く、個人的な事情に基づくものであるため人それぞれ差が出てしまうからという理由があります。
参考:労働基準監督署対策相談室
基礎賃金についてはこの記事で詳しく説明していますのでご覧ください。
計算の例
もっと具体的にイメージしやすくするために、Y子さんの例をもとに実際の計算をしてみましょう。


私はある週の平日は9時から19時(休憩1時間)まで、毎日9時間の勤務しました。
土曜日は所定休日ですが、残っている仕事があったので15時から23時まで、日曜日は法定休日ですが、どうしても終わらせないといけない仕事があったので11時から18時まで勤務しました。
この週のY子さんの状況を整理すると、平日は5日間で5時間の時間外労働をしています。
土曜は15時〜22時の7時間は、すでに週の労働時間が40時間を超えているため時間外労働です。また22時〜23時の1時間は時間外+深夜労働です。日曜は7時間の休日労働となります。
最初に、Y子さんの1時間分の賃金を求めましょう。

月の基礎賃金は、月給から、住宅手当15000円と通勤手当5000円を合わせた2万円を差し引きます。25万円-2万円=23万円です。
そして1時間分の賃金は、23万円÷176時間=1306.81…となり、小数点以下については、50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げとするので、1時間あたりの賃金は1307円になります。
参考:東京労働局
続いて、それぞれ計算をしていきます。
時間外労働
平日に5時間、土曜に7時間なので、1週間で12時間です。1307円×1.25×12時間=19605円になります。
深夜労働
土曜の1時間なので、1307円×1.5×1時間=1960.5となり、1961円です。
休日労働
7時間の休日労働をしています。1307円×1.35×7時間=12351.15ですので、12351円となります。

Y子さんのこの週の残業手当は、19605円+1961円+12351円=33917円となります。


ツールを用いることで簡単に!
ここまで、計算式に代入する算出方法をお伝えしてきましたが、例えば、keisanなどのツールを使えばもっと楽です。面倒な手間を省ける上、ミスを減らせます。
keisanは時間外・休日・深夜労働の残業手当について時間を入力するだけで計算できてしまう優れものです。
ただし、1時間分の賃金や残業した時間については、自分で確認しておかなければなりません。特に間違えやすい休日の割増基準はきちんと把握できるようになっておきましょう。
また、keisan以外にも、エクセルを使って計算することも可能です。こちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
残業手当の未払いがあったら請求できる



残業手当に未払いがあるとわかったら、請求をしましょう。労働者の正当な権利です。
また、請求の時効は2年と決まっています。支払われていないということに気がついたら、早めに行動することが必要です。
残業手当を請求する際の流れ
1.証拠を集める
何よりも大切なのが残業証拠です。当然ですが、残業手当が支払われていないとただ訴えただけでは、支払ってもらえません。
残業したという証拠として以下のものを揃えておけば安心ですよ。
- 就業規則、賃金規定など
- 給与明細、源泉徴収票
- 雇用契約書
- 労働時間の記録
労働時間の記録として有効となるものは多く存在します。あなたの主張が妥当なものであると判断されるためには、より多くの証拠が揃っていた方が良いでしょう。
- タイムカード
- 勤怠記録
- パソコンのログインログオフの記録
- 社員IDカードの記録
- 業務における送信メール
- 業務日報、営業日報
- 交通ICカードのデータ
- ザンレコの記録
ザンレコは残業証拠レコーダーのことを言います。これは弁護士が開発したアプリなので、かなり有力な証拠として使えます。スマホのGPS機能を使って自動で簡単に証拠を確保することができるのです。
GPS機能で証拠を記録するというのがまさに現代って感じですよね。
こちらの記事でさらに詳しく紹介していますのでご確認ください。
2.残業手当の計算
先ほど紹介した通りの計算方法やツールを用いて残業手当を計算しましょう。
3.会社との交渉
証拠が揃って残業手当の計算ができたら、まずは会社に交渉です。法律に関わる問題なので、一般的にはこの段階で支払いが行われます。
私の知り合いは残業手当の未払い請求を会社に交渉したそうですが、証拠もバッチリ揃っていたので無事に支払いが行われたと言っていました。
このように支払いがスムーズに行われたら一件落着ですね。ですが、支払いを渋るという場合も考えられます。そうなると次の段階に進まなければいけなくなります。
4.労働基準監督署へ申告
労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関です。労働基準法違反に対し、救済を求められます。残業の証拠が揃っていて、会社に未払いの請求をした実績があることを条件に利用可能です。
残業手当の未払いがあると申告すれば会社に審査が入ることになります。
知ってる人のとこだけど労働監督署に通報したら監査?はいって残業代とか休みないのとか改善されたよ
ブラックがグレーに変わったくらいだけどそれでもマシにはなったって— あおい@お仕事垢 (@miemiemya) May 17, 2016
審査が入るとさすがに改善せざるを得ない状況になるようですね。
5.労働審判
会社への交渉がうまくいかなかったり、労働基準監督署への申告が通らなかったりしても諦めてはいけません。そういった場合には、裁判所の労働審判を利用します。
引用:裁判所
原則として3回以内の期日で審理を終えることになっているため、訴訟よりも短い期間での解決が期待されています。
前職の残業代未払い請求の労働審判勝ち取りました。アドバイスして下さった方々、応援して下さった皆様本当にありがとうございました。これで借金が消えます。 pic.twitter.com/sWCqQTTfOY
— smichang (@smichang) December 4, 2016

6.訴訟
労働審判で解決できなかった場合には、会社に対して訴訟を起こし、未払いの残業手当の支払いを求めることになります。
訴訟となると、場合によっては解決までに1年以上要することも頭に入れておかなければなりません。会社が残業手当をきちんと支払わないのが悪いのですが、労働者側も相当な労力を使うことになります。

まとめ
今回の記事のポイントです。
- 残業手当は割増率を用いると計算できる
- 計算が大変な時にはツールを用いるのがおすすめ
- 未払いがあった場合には請求できる
- 残業手当の請求期限は2年間
ご自身の残業手当の支払いについて疑問を感じたら、紹介した方法を用いて計算しましょう。計算通りに支払われていなかったら、請求ができることを忘れないでください。あなたがもらう権利があるお金なのですから。
そして、請求の時効まで2年しかないので、早く気づいて行動することが大事です。応援しています。




- 1年で年間1万3000社以上の求人が出る、中小から大手まで幅広い求人、外資系企業も1400社以上
- 累積45万名以上が転職に成功、転職決定者は年間約2万3000名以上
- 62.7%の人が年収アップを経験

- 公開求人数/非公開求人数 約6万6千件/約13万6千件
- 業界№2の大手
- スポーツキャリア、ウーマンキャリアなどdoda独自の働き方を提案
- 「年収査定」「キャリアタイプ診断」「レジュメビルダー」など転職に役立つ無料セミナーが好評。

- 公開求人数 50,000件以上
- 求人の特徴 80%が非公開求人
- 2019年オリコン顧客満足度1位、年収アップ率67.1%以上