役員の退職届の書き方は?取締役辞任の手続きは?退職方法徹底解説!

つい最近、会社に40年近く勤めた役員の方が定年を迎えられ、退職されました。私も入社当初から大変お世話になった方で、送別会では思わず涙ぐんでしまいました。もう何か月も前から退職日が決まっていて、そのための引継ぎや挨拶回り等に忙しく走り回られていたのを覚えています。

そんな様子を眺めては「役員の退職って、一般の社員が会社を辞めるよりも、なんだか大変なんだなぁ」などと呑気に考えていました。

私自身、過去に8回も転職している身です。「社員」の退職方法については、退職の意思を伝えるタイミングや退職届の書き方、提出日、退職の流れなど、一通りは心得ているつもりです。しかし「役員」の退職となると、まるで経験がないため「???」です。

ベンチャー企業などでは、私と同年代の若い役員の人もいると聞きます。

そういった人たちが、何かの拍子に退職しなければならなくなったとき、もしかしたら、私と同じように、退職の手続きで困ってしまうかもしれません。

そこで、私個人の好奇心と、同年代の役員のために、老婆心ながら「役員の退職の方法」について調べてみました。

この記事では、役員の人のこんな疑問に答えます

会社を辞めたいけど、いつでも辞められるんだろうか

会社を辞める手続きってどんなものがあるんだろう?

会社を辞めるときの届け出は、どんな書類になんて記入するんだっけ?

退職金っていくらもらえるの?

社員に比べてクローズアップされる機会が少ない役員。役員の人はもちろん、そうでない人も、あなたが将来役員になったときのことを考えて、役員の退職方法について学んでみませんか?

こんな方におすすめ

  • 会社役員でこれから会社を辞める人
  • 役員が辞めるために必要な書類や手続きがわからない人
  • 役員の正式な辞め方を知りたい人
  • 役員ではないけど、将来に備えて、役員の辞め方を学んでおきたい人
木佐貫
役員の辞め方って、社員と同じくフランクな部分がある一方、一歩間違えれば損害賠償を請求されかねない重要な注意点もあるんです!
ゆかり
私は役員の退職金事情が気になりますね~。きっとガッポリもらっているに違いありません!!

 

役員が会社を辞めるには?

まずはじめに、役員が会社を辞める流れを解説します。

役員の退職方法はそれほど複雑ではありませんが、場合によってはすぐに辞められないケースもでてきます。退職時の流れや注意点を確認しましょう。

役員の範囲

もうすでに役員になっている人は、役員という役職がどういうものかよくご存じだと思います。でも、これから役員を目指す人、役員になりたい人にとって、役員は「なんとなく会社のエライ人」くらいのぼんやりとした認識しかないのではないでしょうか。

そこで、まずは今回お話する役員がどういった役職の人かを明らかにしておきます。

役員とは、簡単に説明すると「会社の重要な意思決定や業務の運営、社員の管理監督の仕事に携わる役職」全般を指します。一般的な会社の役職でいうと、社長、副社長、専務、常務が役員を指し、それ以下の部長、課長は管理職である一般社員、ということになります。

一般社員と管理職は同じ「社員」としてひとくくりにできますが、「社員」と「役員」は法的に立場が明らかに違います。

社員と役員の違い

社員・・・会社とは「雇用契約」を結んでいる。契約によって、会社に雇われいている。いわゆる「労働者」

役員・・・会社とは「委任契約」を結んでいる。会社の経営を任されているのであり、雇われているのではない。いわゆる「使用者」

経営者といえば「社長」だけをイメージしがちですが、じつは「専務」や「常務」といった肩書も経営者の一員ということが多いのです。

とはいえ、「社長」や「専務」などの肩書は「会社法」で定められた名称ではないため、必ずしも役員を表す言葉ではありません。「社長」であっても「役員ではなく雇われの一社員」ということがあります。

法律で定められた正式な意味での役員=経営者には、次のような種類があります。

役員の種類(会社法による)
  • 取締役・・・取締役会(会社法で定められた、会社の業務執行を意思決定する機関)の一員として、会社経営の意思決定に関わる。小さな会社では、取締役1名のみ(=会社代表)の場合も。
  • 会計参与・・・会計処理のスペシャリスト。取締役と共同して、書類作成などを担当する。税理士、税理士法人、公認会計士、監査法人しかなれない。
  • 監査役・・・会計書類の不正の有無や取締役の会社運営に問題がないかをチェックする。
  • 執行役・・・委員会が設置されるような規模の大きな企業に設置。取締役に代わって、会社の業務を執行し、取締役と兼任できる。

※似た言葉に「執行役員」がありますが、こちらはあくまで「社員」です。役員ではないので注意。

このうち、取締役の中でも代表権を持つ真の意味での会社トップを「代表取締役」といいます。

今回、テーマとして取り扱うのは「代表取締役」以外の一般役員です。(代表取締役と一般の役員では、辞めるときの手続きが大きく異なるため)

ややこしいから注意!
社長、部長、課長・・・のような肩書と、取締役や監査役など「会社法」で定められた役職は無関係。多くの会社では「代表取締役が社長を兼任している」ことなどがあるため、社長などの肩書と代表取締役などの役職が混同されがち。あくまで法律的に「使用者」とされる人たちは、取締役などの役職名を持つ「役員」の人たち。
木佐貫
社長であっても「代表取締役」などの役職がない場合は、雇われ社員なんですね。社長なのに僕らと同じ雇われサラリーマンだなんて、なんだか不思議な感覚です。

参考:ビズリーチ BizHint

役員が「会社を辞める」ことを表すコトバ

もう一点、役員経験のない人が混乱しやすいポイントがあるので、本題に入る前に解説します。

それは「役員が会社を辞めるときには、そのことをなんと表現するのか」ということです。一般の雇われ社員が会社を辞めることを「退職」といいます。上司に提出する「退職願」や「退職届」にも「退職」の二文字が使われているのでわかりやすいですね。

一方、役員級のエライ人が会社を辞めるときは「退職」ではなく「辞職」といいます。

似た言葉に「辞任」という言葉もありますが、こちらは「就いていた任を辞める」という意味で、必ずしも「職場を去る」意味を含みません。

木佐貫
よくニュースで「〇〇大臣が責任を取って辞任を表明しました」などと流れますが、これは「〇〇大臣」という任を辞めるだけであって、「国会議員」を辞めるわけではありません。
退職と辞職の違い

退職・・・一般社員が会社を辞めること。

辞職・・・役員が会社を辞めること。(課長以上の役職者が辞める場合にも使われる)

ゆかり
ただ、これは厳密な意味での言葉の違いです。日常的な会話の場面では「役員の〇〇さんが退職されるそうですね」などと話しても問題ありません。

参考:
毎日新聞 コトバ解説 「辞任」と「辞職」の違い
違いがわかる辞典

役員はいつでも辞められる?

さて、役職や退職に関する言葉の整理が終わったところで、ようやく本題です。

まず、結論の一つを先にいってしまうと、役員は辞めたいと思ったら、いつでも辞められます。「ちょっと待って。役員には『任期』があるのでは?」そう思われる人もいるでしょう。たしかに、役員には任期があります。

役員の任期

取締役・・・原則2年。 ※株式非公開会社は最大10年に延長可能

監査役・・・原則4年。 ※同上。

つまり、上場企業では、取締役で2年、監査役で4年の任期があるのです。株式非公開の中小企業であれば、任期はさらに長く、最大10年にも及びます。それでも、役員は任期を残して途中で辞められるというのでしょうか。

その答えは「YES」です。

冒頭でもお伝えしたように、役員はたとえ任期途中であっても、いつでも辞められます。しかも、会社代表者や株主総会の承諾は必要ありません。

辞めると言ったら辞めるんだい!!」それで、なんの問題もなく辞められるのです。

役員が会社を辞める流れ

役員が会社を辞める流れは、基本的には社員が辞める流れとほとんど同じです。

役員が辞職する流れ

  1. 辞職の意思を表明する
  2. 「辞表」の提出(事前に「就業規則」を確認し、退職のルールを把握しておくこと)
    ※提出先は、会社代表者
    ※株主総会や会社代表者の承認はいらない
  3. 後任の決定と引継ぎ
  4. 退職

一般社員との違いは、会社に提出する書類が「退職願」か「辞表」かの違いです。「辞表」は、役員が会社と結んだ「委任契約」を解除するために必要です。

詳しくは後で説明しますが、なにかと責任の重い役員は、書面にして「退職の意思」を残していないと、のちのちトラブルに巻き込まれてしまいかねません。そこで、文書という形で手続きの証拠を残しておく必要があるのです。

ゆかり
役員が社員と同じくらいアッサリと辞められるのはなんだか拍子抜けね~。役員が辞めるときに注意すべきことは他にないのかな?
木佐貫
原則的には、役員はいつでも辞められるんだけど、次期によっては辞められないケースも出てくるんだ。次に説明しよう。

参考:起業サプリジャーナル 取締役の任期は何年が良いの?

すぐには辞められないケースも

役員が辞意を表明するタイミングは自由です。原則、好きなときに辞められます。

しかし、これには例外もあります。それは、役員が辞めることで、法律や定款(ていかん)で定めた役員の人員配置基準を満たせなくなる場合です。もし、そのような状態で役員が辞職を申し出ても、法律上、役員としての権利や義務が残ることになります。

具体的にみていきましょう。

ケース1:「取締役会」の最低人数を下回る場合

株式公開会社には、会社法によって「取締役会」の設置が義務付けられています。

取締役会の構成員である「取締役」は、最低3名必要です。たとえ一人の役員が辞職を表明しても、人数が3名を下回ってしまう場合は、後任を選任するまで、役員としての権利・義務が残ってしまうのです。

ケース2:定款(ていかん)で定めた役員の人数を下回る場合

定款とは、会社運営の規則を定めたものです。この定款で定めた役員の人数を下回る場合も、後任が決まるまで役員を辞められません。

例えば、定款で「2名以上の取締役を設置する」と定めた場合、どちらか一方の取締役が辞職すると、取締役が1人足りなくなってしまいます。この場合も、後任を選任するまで、役員としての権利・義務が残ります。 

ケース3:会計参与、もしくは監査役がいなくなる場合

会社の規模や形態によっては、会計参与もしくは監査役の役員は、すぐには辞められない可能性があります。

  • 会計参与が辞められない場合・・・取締役会がある会社で、監査役がいない場合、会計参与の設置は義務です。そのため、後任の会計参与が選任されるまで辞められません。
  • 監査役が辞められない場合・・・取締役会を設置する会社には監査役の設置が義務付けられています。そのため、株式公開会社(=取締役会設置は義務)は必ず監査役が必要であり、監査役の役員は後任が決まるまで辞められません。一方、株式非公開会社で取締役会を設置している会社の場合は、監査役の代わりに「会計参与」を置くことができます。会計参与がいる場合は辞められます。

いずれのケースでも、会社に設置が決められている役員の定員を下回ってしまう場合は、後任を選任するまで会社を辞められないことになります。

しかし、上記の問題を解決するため、裁判所に申し立てて「仮取締役」を選任してもらい定員を充足させる方法もあります。ただし、申し立てには手間がかかるので、会社に早急に後任を選任してもらうことがベストです。

木佐貫
役員の人が会社を辞めるときは、役員の定員について自社にどんなルールが当てはまるか確認することが必要です。

合同会社の場合

今まで説明してきたのは「株式会社」の役員が辞めるときの流れです。しかし、会社には株式会社以外の形態もあります。

なかでも多いのが、合同会社と呼ばれる形態の会社です。

合同会社とは、会社の運営に必要な資金を社員が出し合って設立する会社です。そのため、会社の運営者と持ち主が同じという特徴があります。それに対して、株式会社は株式という形で株主から資金を集めるので、会社の運営者と持ち主が異なります。

さて、合同会社は会社の持ち主が個々の「社員」のため、この社員が株式会社の「役員」にあたります

社員が会社を辞める場合は、とくに定款で定めのない場合、事業年度終了時点で辞められます。その際、退社の6ヶ月前までにはその旨を会社に通知するのがルールです。ただし、特例もあります。

合同会社の社員が会社を辞める場合の特例

  • やむを得ない理由があるとき
  • 総社員の同意を得たとき

会社を辞めざるを得ない場合や、全社員の同意を得たときはいつでも辞められます。(この場合の社員は経営者層のことです。一般労働者である「従業員」の同意は必要ありません)

ゆかり
大きな怪我や病気で療養が必要になったりすると、物理的に仕事が難しくなるもんね。当たり前のことだけど、そういう場合は事業年度を待つ必要はないんだね。

参考:
汐留司法書士事務所 合同会社の社員が退社をするときの持分の払戻しと退社手続き
鳥飼総合法律事務所 会社法QA 第10回 取締役の人数
J-Net21 法律コラム
企業法務ー弁護士 金子 剛|渋谷法律事務所

会社が辞めることを認めない場合

「法律や定款で定めた役員の人数を下回ることで、後任の選出まで会社を辞められない」という問題の他に、会社が辞めることを認めない、という場合も考えられます。そういう場合、どうしたらよいのでしょうか。

役員は会社や株主の許可なく辞められることはすでにお話しました。ですが、役員が辞めた後でも、役員としての義務が残る場合があります。それが、会社が退任登記を行わない場合です。

退任登記とは?

会社は、当該役員の辞職の日から原則2週間以内に登記申請を行う必要があります。役員が辞めたときの登記申請を「退任登記」といい、本社所在地を管轄する法務局にて行います。

2週間を大きく過ぎても退任登記が行われなかった場合は、過料(会社代表者個人が100万円以下の過料)の対象になるリスクがあります

この退任登記を会社がしないと、辞めた役員にどんな不利益があるのでしょうか。

それは、役員が辞めたことを知らない個人や他者に対して、役員としての義務が残ってしまう、という問題です。

退任登記がされない問題点
当該役員の辞任を知らない取引先など「第三者」に対しては「辞職した」ことを主張できない
→役員の辞任を知らない個人や会社に対しては、役員としての義務や責任が残ることに
ゆかり
ということは、本人は辞めたつもりでも、何か問題が起これば責任を追及されることがあるってこと?

そういうことです。

例えば、こちらの記事では、役員が既に辞めた会社が、取引先に多額の借金を抱えて倒産するなどとなった場合、もし当該役員の退任登記がされていなければ、辞職した役員にも責任追及が及ぶ可能性が示唆されています。

木佐貫
めちゃくちゃ理不尽だけど、きちんと登記を変更しておかないとそういうリスクもあるってことだね。

では、そのようなリスクを避けるためには、どうしたらよいのでしょうか?主に2つの方法が考えられます。

役員の退任登記を完了させる2つの方法
  1. 会社に対して、登記申請をするよう交渉する・・・退任登記は会社法に定められた義務です。役員退職後、2週間以内に手続きをしないと、代表者に過料が課せられるリスクも。会社としてはそのようなリスクは是非とも避けたいはず。罰則について会社側が知らない可能性もあるので、登記申請するよう交渉してみましょう。
  2. 訴訟を起こす・・・辞任した役員が自分自身では登記変更は行えません。しかし、裁判所に対して「取締役退任登記手続請求訴訟」を起こし、勝訴することで、自分で登記変更できるようになります。ただし、訴訟は費用や手間がかかりすぎるので、できれば会社と交渉して登記変更してもらいましょう。

このように、退任登記が完了して、晴れて役員の責務から解放されるのです。

ゆかり
でも、会社の役員なんて有能な人が辞めてしまうのはもったいないわね。転職したら、きっと引く手数多なんでしょうね。

会社経営のスキルや能力は、どの業界でも求められます。あなたが定年退職や起業のために退職したのでないのなら、好待遇の会社に転職することも夢ではありません。

ステップアップ転職の方法は、次の記事に書かれています。ぜひごらんください。

【最新版】30代の転職エージェントランキング【転職回数3回以上の方向け】

2019年3月25日

参考:
金山・吉野国際司法書士事務所 退職(辞任)した元取締役が、会社の登記記録に未だ取締役として残っている場合の問題点(2回目)
フォーサイト総合法律事務所

 

会社役員が辞める時期やタイミングとは?~訴訟のリスクを回避する~

役員がいつでも自由に辞められることは先にも説明しました。

しかし、一般の社員が辞める場合と同じく、自分が辞めた後に業務に支障が出ないよう、引継ぎ等のやるべきことがあります。これらを怠った結果、会社に損害を与えることになり、損害賠償を請求される可能性もあります。

とくに役員が仕事を途中で放棄して辞めた場合、社員よりも会社に与える損害は大きいと考えられるため、損害賠償を受けるリスクはより大きくなります。

では、どのようなときに損害賠償を受けるのでしょうか。それは「不利な時期」に辞める場合です。

不利な時期とは

後任がいない、当該役員にしかできない業務の引継ぎができていないなど、突然辞めてしまうと業務遂行上の問題が生じる場合。

役員が辞めることで、会社に損害が生じることが予想される時期を「不利な時期」というのですね。やはり、余裕を持って辞職の意思を示し、後任選出や引継ぎが完了してから退職することが理想です。

木佐貫
ただし、重大な怪我や疾病など、業務の遂行ができないような「やむを得ない場合」は辞めても損害賠償を請求されないようです。ケースバイケースなので、どうしても辞めざるを得ない事情がある人は、会社に相談してみましょう。

参考:会社設立ドットネット 取締役の辞任手続き【Q&A形式でわかりやすく解説】

 

会社役員が辞める時に書く書類は「退職届」ではなく「辞表」

一般の社員と同じく、役員が退職するときにも「辞めることを意思表示する」書類を届け出なければなりません。

退職のときに出す書類ですから、役員も「退職届け」を出す必要がある・・・と思われがちですが、実は違います。『役員はいつでも辞められる?』の章でも少し触れましたが、役員が辞めるときに会社に提出する届け出は「辞表」といいます。

役員は会社と「委任契約」を結んでいるため、この契約を解除するには「与えられた職務を辞める」ことを意味する「辞表」が必要なんですね。

ゆかり
公務員も辞めるときは「辞表」を書くって聞いたことがあるわ。
木佐貫
厳密には公務員は雇われではないからね。行政から公職の任務を受けるという形になっているみたいだよ。役員も会社の持ち主である株主から会社運営の任務を受けているから、実は立場はどちらも似た者同士なのかもしれないね。
ゆかり
なるほどね~。「退職届」は会社に雇われている社員が、「辞表」は会社に経営を任されている役員が書くものなのね。

では、この辞表は、どうやって作成するのでしょうか?書式やルールについて解説します。

辞表(辞任届)の書き方

辞表とは、厳密には「辞任届」のことを指します。以下のような書式になります。

引用:デイライト法律事務所HP内 PDFファイルより

  • 会社名
  • 辞職理由
  • 辞職の予定日
  • 辞任届作成日
  • 住所
  • 氏名
  • 印鑑

などの記載が必要です。辞職理由は「一身上の都合により」としておけばOKです。その他ポイントとしては、

作成方法・・・手書き、パソコンどちらでもOK。ただし、署名欄は直筆のこと。

用紙サイズ・・・A4用紙が一般的。封筒に同封の上、提出してください。

会社によっては書式が決まっている場合もあるため、書き始める前にまずは確認しましょう。

ゆかり
ほとんど退職届と同じ書き方ね。
木佐貫
そうだね。だけど、いくつか注意点もあるよ。
注意点
「辞任届」は退任登記の手続きに必要な書類です。そのため、「取締役本人が作成した」という真実性の証明や、後のトラブル防止の観点から、以下のような書き方を推奨します。

  • 自筆の署名
  • 実印押捺
  • 印鑑証明書の添付
ゆかり
役員が辞めるときは、いかに役員としての権利義務により発生する問題を回避するかが大事なのね。退職の書類ひとつとっても、一般社員より重みがあるのがわかるわ。

参考:
西尾努司法書士事務所 取締役の辞任届に押す印鑑は実印?認印?
退職願・退職届・辞表の書き方

辞表(辞任届)は手書きがベター

上記注意点でもお伝えしている通り、取締役などの役員が辞める際は一般社員よりも重たい責任や内部の機密を知っていたりすることから慎重に扱われます。

ですので、必要な書類は用意した上で手書きで書類作成することで、確実に本人が書いたという証明をすることが可能です。パソコンで書類を作っただけであれば誰にでも偽造可能です。間違って役員が辞めさせられるといったことがあればそれこそ大問題に発展してしまいます。

なので複製が難しく、本人である確証を取りやすい「手書き」にすることで、大きなトラブルを回避することができます。

一般社員より重たい責任を負う役員だからこそ立つ鳥跡を濁さずで、スムーズな手続きを心がけることです。

 

取締役などの役員も退職金をもらえる?

さて、退職の流れがわかって、辞表の書き方もマスターしたところで、最後は誰もが気になる「退職金」について少し触れておきます。

大前提として、一般社員・役員問わず退職金の支払いは法律で決められた義務ではありません。したがって、退職金の支払いがない会社もたくさんあります。

会社にとって退職金の支払いは義務ではない
退職金はすべての会社で支払われるわけではない。退職金がない会社も一般的。

退職金がある会社の場合、役員も社員と同じように辞める際にもらうことができるのでしょうか?また、その金額は?そんな疑問にお答えします。

退職金の支払いがある会社の場合、一般社員は「退職金」ですが、役員に対しては「退職慰労金」という名目で支払われるのが一般的です。役員が退職慰労金を受け取ることができるのかどうかや、退職慰労金の金額は、以下のような条件で決められます。

退職慰労金の支払いに関わる条件

退職慰労金の支払いの可否に関する条件・・・委任契約や退職慰労金規定など、社内規定に退職慰労金の支払いが約束されている必要がある

退職慰労金の金額・・・定款で定められている金額、もしくは、株主総会の議決で決められた金額

木佐貫
一般的には、役員といえども経営者層の好きに退職金が支払われるのではなく、社内に細かな決まりやルールがあります。

逆に、以下のような場合だと、退職慰労金がもらえない可能性が高まります。

退職慰労金がもらえない場合
  • 社内規定にない場合
  • 株主総会で議決されない場合

→株主の反対多数で否決、もしくは、株主総会の前段階「取締役会」で退職慰労金の議案を提出しないことが決定された場合
→後者の場合、多くは他の取締役と関係が悪いか、なんらかの理由で会社に対する功績が認められない、あるいは打ち消されてしまっている。また、業績悪化により退職慰労金の原資がない可能性もある

ゆかり
経営者層や株主から「退職慰労金を支払う必要はない」と判断されてしまうと、もらえないこともあるのね。普通に勤めていれば問題はないでしょうけど、他の経営者との関係や仕事の評価、社内での振る舞いなんかは、一度振り返っておいた方が良さそうね。
木佐貫
そうだね。他には、業績が悪くなるなどで、退職慰労金を用意するだけのお金がない場合ももらえなくなることがあるよ。

退職金の一般的な計算方法

退職慰労金の準備がある会社では、条件を満たせばきちんと支払われることは確認しました。では、退職慰労金の金額は、どのようなルールに沿って決められているのでしょうか。

まず、退職金の決め方についてですが、驚くことに、退職金の金額の上限は法律で決められていないそうです。

ゆかり
え!?じゃあ、経営者は好きなだけもらえるじゃない!!

そうです。原則的には退職慰労金は「いくらでも支払っても良い」のです。しかし、法律上はそうだからといって、株主や社員の手前、そのような自分勝手な考えで会社のお金を使うことはできません。

また、税務会計上、退職金は「経費」として考えられていますが、あまりに高額だと必要経費とは認められず、会社の損害になってしまいます。

ゆかり
「役員の退職慰労金にたくさん支払ったから、今期の利益は少なくなりました」なんて話、許されるわけがないものね。

そこで、退職慰労金の支払い額は、以下のような式で計算されるのが一般的です。

退職慰労金の計算式
最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率=退職慰労金の金額

それぞれの項目は、以下のような内容になっています。

  • 最終報酬月額・・・その役員が辞めるときの報酬月額
  • 役員在任年数・・・役員として勤めた年数。勤続年数ではないことに注意
  • 功績倍率・・・役員の功績等を倍率にした数値。普通、規模が近い同業他社が使用する数値などを参考に決める

では、具体的に退職慰労金のシミュレーションをしてみましょう。

退職する役員

役職:専務
最終報酬月額:100万円
役員在任年数:20年
功績倍率:2.5

功績倍率
社長 3.0
専務 2.5
常務 2.5
平取締役 2.0
監査役 2.0 

上記のような人が会社を辞める場合、式に則って計算すると、退職慰労金の金額は以下のようになります。

退職慰労金の金額:100万円×20年×2.5=5,000万円

木佐貫
功績倍率は同業他社で、規模が近い企業のものを参考に決められます。社内に規定がある場合が多いので、計算してみたい人は確認しましょう。

勤続年数が5年以下の人は、退職すると所得税の面で損をする

退職金には、税制の面で優遇制度が設けられています。役員がもらう退職慰労金も例外ではありません。

そんな退職金の優遇制度の一つに、「1/2課税」の優遇があります。

「1/2課税」とは、所得税や住民税が、退職金そのものへ課税されるのではなく、次の式で求められた「退職所得」に対して課税される、というルールです。

退職所得の金額は、以下の計算式で求められます。

退職所得の求め方
(退職金-退職所得控除額)×1/2=退職所得金額

退職所得控除額

引用:キムラボ 役員は5年以内で退職するな!「特定役員退職手当」とは?

では、例で計算してみましょう。

退職所得金額の計算例
50歳、勤続年数30年、退職金5,000万円の人の場合

 

(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円

上記例の場合、この1,750万円に税金が課かります。

ゆかり
なるほど、退職金全額に課税されるのではなくて、退職金よりはるかに少ない退職所得金額に課税されるのね。めっちゃお得じゃない!!

そうなんです。「1/2課税」の優遇はめちゃくちゃお得なんですよ。とくに年収が高い人ほど税金で徴収される割合が高くなりますから、退職金を多くもらうためにも、この制度はぜひとも利用したいところです。

しかし、あるケースでは、この「1/2課税」が受けられなくなってしまうんです。

ゆかり
え!それって最悪!!

そうですよね、最悪ですよね。そのケースとは、役員自身が「特定取締役」の場合です。

特定取締役とは
役員としての勤続年数が5年以下の者 

役員になってから、5年に満たない人は、退職慰労金の税制面で損をすることになるんです!!

さきほど「退職所得」の計算でご紹介した人が、勤続年数は同じでも、役員になってから5年以下であった場合、退職所得は次のようになります。

退職所得(1/2課税未適用の場合):5,000万円-1,500万円=3,500万円

上記の例では、退職所得金額は3,500万円となり、これに所得税や住民税がかかります。

「1/2課税」の優遇がある場合:(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円

「1/2課税」の優遇がない場合:5,000万円-1,500万円=3,500万円

どうでしょう。同じ会社に同じ年月勤めているのに、役員である期間の長さによって、これだけの差になってしまうのです。

木佐貫
単純に考えると、「1/2課税」があるのとないのとでは、課税される退職所得の差は2倍です!役員が5年未満で辞めるのは、圧倒的に損ですね!!

会社の株を持っている場合

ゆかり
役員って経営者のことよね。辞める人が会社の株を持っていたらどうするの?返すの??

役員の人が会社を辞めるときに、自社株の処分をどうするか悩む場合も多いですよね。どのように扱うべきなのでしょうか。

一般的には、自社株の扱いは次の2通りに分けられます。

  1. 引き続き株を保有しておく
    →社員としての身分と株主としての身分は別。引き続き株を持っていてもなんら問題はない。
  2. 株を会社に譲渡する
    →株を会社に譲渡する場合「無償で譲渡する場合」と「有償で譲渡する場合」の2つの方法がある。

株式を譲渡する場合、手続きをする必要があります。具体的な方法は、以下のサイトを参考にしてください。

株式を譲渡する場合の手続き:会社設立ドットネット 株式譲渡手続きの概要【必要書類・手続きの流れ・譲渡時の注意点など詳細解説】

参考:
労働問題弁護士ガイド 取締役の退職金について、社長・役員は退任したら退職金がもらえる?
若林税理士事務所 役員退職金の計算方法
キムラボ 役員は5年以内で退職するな!「特定役員退職手当」とは?

 

まとめ

本記事のまとめです。

まとめ

役員は基本的にいつでも辞められる

後任が決まっていないなど、場合によってはすぐに辞められないこともある

役員が引継ぎや後任の選出を待たずに無理矢理辞めた場合、損害賠償を請求される可能性がある

役員が辞めることを「辞職」といい、辞めるために提出する書類を「辞表」という

役員も退職金をもらえるが、金額は同業他社と比べて大きくしすぎてはいけない

役員が退職するときには守らなければならないルールや注意点が多くあります。社員と同じような感覚で会社を辞めようとすると、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう場合も。役員が辞めるときは、期間に余裕を持って会社と相談しながら退職計画を立てましょう。

また、気になる退職金についても、知らなければ損をする大きな落とし穴が。

役員は社員と同じように、辞めたいときにいつでも辞められる権利を持っています。しかし、後々のトラブルや損をするリスクを回避するために、今回ご紹介した「辞めるべき時期」や「辞めるときのルール」を把握しておくことが大切です。

長く勤めた愛着ある会社。わだかまりや後悔が残る辞め方をするのは、誰もが避けたいはずです。お別れのときこそ、納得のいく退職を実現してください。

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