転職癖。
そんな言葉があると知ったのはこの転職サイトを立ち上げて間もなくのことでした。
過去に8回の転職を重ねて来た経験上、私もその類いの人種にあたるのかしらと思い調べてみたところ非常に多くの人が悩んでいることを知りました。
など多くはたいがいネガティブな内容で、とにかくこの癖を治したい、どうにかしたい。
そんな切実な様子がうかがいしれます。
何てことでしょう、同じ転職のプロ、マルチ転職ッカーとしては黙っていられません。ここはひとつ同じ悩みを持つあなたのために立ち上がろうと思います。
Contents
職を変えるのってそんなに問題?
確かに転職を繰り返す人というのは世間的にあまりいいイメージを持たれません。
「長続きせずすぐ辞めてしまう」 「社会人としての常識に欠けているのでは」 「すぐ辞めてばかりいるから仕事が覚えられず経験もないのでは」
などと思われたあげく、ひどい時には「渡り鳥」「流れ者」「怠け者」「フラフラしている」というレッテルまで貼られてしまい、当の本人たちも強い罪悪感を抱くことになってしまいます。
そして残念ながら日本では転職をした後では役職や給料が転職前より下がってしまった例が多く、ひどい場合非正規雇用としての待遇でしか働けないこともあります。
実際私の知っている人でも複数回転職をしている人は結構いますが、その多くは確かにはたから見ても良い人生を送っているようには見えません。
でも待ってください、その原因は本当に彼ら彼女らだけの責任なんでしょうか?
飽きっぽくてすぐ仕事がいやになってしまう人も中にはいますが、リストラ、倒産、ブラックな職場、精神的・身体的疾患、家庭の事情などやむを得ない理由で働けなくなった人たちも少なくないはずです。
最近の調査でも、転職した人の退職理由を見ると「給与や休日などの待遇面が悪かった」という声が多くなっており、本人というより会社の側にも問題がある傾向が増えています。
そして最も深刻な問題は社会の不景気な時代に就職氷河期にぶち当たってしまった団塊ジュニア世代の不遇ぶりです。私もこの世代だから言うわけではありませんが、好景気ならば彼らは今ごろ日本社会の屋台骨を支えて活躍しているはず。
その多くの人材が、国や企業が方策を誤ったために非正規雇用に甘んじざるを得ない現状。
今の日本の社会はこうした理不尽な目に遭っている働き手で一杯です。
氷河期世代は能力が低い?人生“再設計”の大いなる矛盾|日経ビジネス
そんな彼らが、何とか自分に合って働ける場所を求めて仕事を替えていくことの何が問題なのでしょうか?
仕事するのは何のため?ここがヘンだよニッポン人
成長を求め、より良い環境や待遇を求める世界の労働者

ここでは少し目を外に向けてみましょう。
海外では転職それ自体が罪悪感のあることだとは思われていません。
働く人の多くは自分に合わないだとか、より良い条件があればとかでいとも簡単に服を着替えるように仕事を変えまくります。
欧米では、特に金融やIT、エンジニアリングなどの業種で、数年に一度転職するといったペースはごく普通のこと。というのも、人材としての成長にしたがってより良い待遇条件を目指すのはもちろんのこと、自分自身が市場で需要のある人材でありつづけるためにも、よりスキルアップできる環境を求めて、”自分のために”転職するという考え方があるからです。
(中略)欧米では就職とはその名の通り”職業”に”就く”意味であるのに対し、日本では会社や肩書きに就く、”就社”や”就ポスト”といった意味合いが強かったので、就職市場での自分の価値を客観視し、自分のスキルを向上させる努力や、”より働きやすい”人間関係・職場環境の追求への関心が薄かったとも言えるでしょう。」
引用:海外と日本でこれだけ違う! 転職に対する考え方(太字は筆者による強調)
たとえば中国やタイでは、転職未経験者よりも転職経験者のほうが管理職になる確率が高く、転職経験が多いほどその確率が上がっています。またインドネシアなど、転職回数が昇進に影響を及ぼさないという結果が出ている国もあります。
引用:アメリカではみんな11以上の仕事を経験!?世界の転職事情を調べてみた(太字は筆者による強調)
そう、日本以外の国では仕事は服と一緒。エリート層であれば、経験とスキルを上げてより良い待遇と必要とされる人材になるための手段ですが、仕事より自分の人生を優先させる一般人にとっては仕事は生活を支える糧。生きていくためになくてはならないものですが自分に会わなくなれば変えれば良い、その程度のことなのです。
もちろん自分の仕事に誇りを持つ人もたくさんいますし、自分のするべき仕事は全力で取り組む人がほとんどですが、それも自分の人生があってこそ。
仕事のために自分の人生を犠牲にしたり精神を病むほど悩み苦しむ発想はありません。
「リフレッシュするために」
日本とは微妙に異なる「転職のきっかけ」
日本では年代性別を問わず、「給与への不満」が最も一般的な転職理由として挙げられることが多く、次いで「雇用形態への不満」「会社の将来への不安」「職場の人間関係」などキッカケとなるようだ。
一方インベスターズの調査によると、英国では約半数が「マネージメントの悪さ(43%)」を転職の主な理由として挙げているほか、「尊重されている気がしない(39%)」「給与への不満(38%)」「仕事にやり甲斐を感じられない(34%)」「キャリアアップの可能性が低い(29%)」など、どちらかというと精神的なストレスが原因となっているのがわかる。
引用:【英国転職事情】勤務しながら常に職探し、3~5年に1度は転職?
多様性と変化を嫌う日本。継続・忠勤・事なかれこそ正義
ではなぜ日本だけそんなに仕事や職場を長く続けることに価値を見いだされるのでしょう。
そこには二つの慣習が根付いているからだと思います。
多様な選択肢を認めない風土
まず日本では一つのものをそれ一筋にやり続ける、つまり「わき目も振らず一つの道を極めること」「継続すること」が何より大事なのが尊重される社会なのです。
辛抱強くコツコツと。この道一筋ン十年。日本人の大好きな言葉です。
アメリカの子供たちがバスケとアメフトと野球をいろいろ試して成長する一方で、日本では一度部活に入ったら他のスポーツや芸術活動を行うことは極めて少ないです。
本来は様々なことに興味を持ち、自分が本当に夢中になれるものを見つけるまでトライ&エラーを続けることはごく当然なことです。
ですが長らく日本の社会は自由に環境を変え、ルールを変え、考え方を変えることを嫌がる社会、個人個人の違いを受け入れられない社会でした。
そこでは「飽きっぽい」はネガティブな言葉とされ、個人の向き不向きや特性などは考慮されません。
カイシャに縛られた人生設計
もう一つの慣習は高度成長期の終身雇用制度で、会社が一括で採用し一斉に同じメニューで育成し年数を経るごとに給与が上がる仕組みを確立したこと。
人々の生活が向上して、誰もかれもが車を、家電を、家を買わなければいけないと洗脳されたのもこの時期で、たとえローンを組んで莫大な額の買い物をしても、同じ職場に長く勤めさえすれば確実に給料は上がっていく。
だからどんなに辛くても、多少精神を病んでも我慢して続けるほかなかったのです。
日本のサラリーマンがサムライに例えられたのもこの頃です。
「忠臣は二君に仕えず」が美徳とされ、同じ職場で長く忠誠を尽くすことが成功の唯一の方法。多少不満があってもコロコロ勤め先を変えるなど多くの人にとっては考えられないことだったことでしょう。
人の考え方や価値観は急には変えられません。残念ながらまだまだ日本の社会ではそうした風潮が根強く残っていることは確かです。
崩壊した日本型雇用。間違っているのはあなたではない

その一方平成の30年間で世の中は大きく変わりました。
不景気と規制緩和とグローバル化に情報産業の発達。正規採用は減り、給料は上がらず人はどこででも働ける。会社が労働者の生活を生涯保証してくれる時代ではなくなりました。
そしてついこの間、経団連の会長からも「日本型終身雇用はもはや無理」という発言が飛び出しました。
参考:経団連会長“終身雇用を続けるのは難しい”|Yahoo!ニュース
そんな世の中で昔ながらの日本式労働習慣に合わせられないからといってそれが何だというのでしょう。
そう考えれば「自分に合わないから仕事辞める」「やりたい事探すから仕事変える」という発想は、日本ではけしからん事でも、海外に出ちゃえばごく普通だと言えます。
あなたの転職癖が国際標準的に見れば必ずしも悪いことではないと気がつくだけでも気持ち的にプラスになるのではないでしょうか。いっそ一念発起して英語か現地語を必死で覚えて外国で職を転々としたほうがマシかもしれません。
マイナスにならない転職の繰り返し方。どうすれば?
ステップアップしたい!でも雇ってもらえない…

せっかく転職をするのだから少しでも良い仕事に就きたい。そんな人は一体どうすればいいのでしょうか。
結局のところ、転職を繰り返して失敗する人には原因があり、成功する人にもするだけの理由があります。
失敗する人の例を挙げます。こちらの小林さん(仮名)の例は深刻です。
新卒で一部上場企業に入ったものの先輩の下請け仕事ばかりに不満を募らせ、入社2年目に「こんなつまらないクズみたいな仕事するために入ったんじゃない」と上司との口論のあげく退職。以来「やりたい仕事」を求めて十数回転職をしたもののその頃には面接でもハネられ続け、食うや食わずの現状です。
彼の何が問題だったのでしょうか? 結論を言えば、30年間ひたすら「自分探し」しかやっていないからです。どこかに「本当に自分が好きな仕事がある」と考える。そしてひたすら「好きな仕事」に巡り会うチャンスを追い求めてきたのです。
(中略)
「これだ! これぞオレがやりたい仕事だ」と意気揚々と職に就いたものの、「話と違うじゃないか。これはオレがやりたい仕事じゃない」と失望し、離職することを繰り返してきたのです。」
小林の問題は、実はもう一つあります。すでに50歳を過ぎているのに、ビジネスパーソンとしての「売り」、言い換えれば「商品力」がないことです。明らかに彼は「自分という商品づくり」を怠ってきました。
引用:新卒2年目から転職を繰り返し… 30年間も「自分探し」を続けた50代男性のいま|SankeiBiz
今の日本で何度も転職を繰り返す人というのは、こうした例が悪いイメージとして刷り込まれてしまっています。
一方ではこういう人が成功を収めています。
こちらは契約社員の製造スタッフから正社員として不動産のメンテナンススタッフへ転職した方です。
せっかく色んな選択肢があるのなら、これまで自分がやったことないことをしようと思ったんです。これまでは、紙や服、航空機部品といった製造をはじめ、キャバクラの副店長、ゴルフ場の施設管理などを経験していました。29歳で6社経験。正直、転職回数が多い経歴だと認識していたので、自信はまったくない。そこで、自分がのめりこめる仕事を探すことにしました。やりたいという軸がないと、長続きできないと思ったからです。
ピンときたのが、ミニミニハウジングのメンテナンススタッフの募集でした。決め手になったのは2点あります。1つは不動産大手のミニミニグループで正社員になれること。もう1つは、「つくる」仕事でなく「直す」仕事に魅力を感じたこと。もので溢れた今の時代だからこそ、新たにものを生み出すのではなく、直して長く使うことに価値を感じたんです。
引用:20代で6社も経験したボクが、1発で内定をもらえたワケ。|エン転職
こちらは飲食店のマネジメントからWebエンジニアになった方です。
――面接はどんな感じだったのでしょうか?
主に、これまでの経験を深掘りして質問をされました。僕はマネジメント経験があったので、その時の苦労や実際に行った工夫点などをお話しました。
あとは、今後のキャリアパスをどのように描いているかという点も聞かれましたね。僕自身は、1つの技術を突き詰めていくというよりかは、マネジメントが得意でもあるので、ゆくゆくは上流工程に携わりたいと思っています。
ただ、技術力がないと技術者をマネジメントするのは難しいと思うので、まずはスキルアップと経験を積む所が大切だと考えています。
引用:未経験からエンジニアへ転職!転職活動から1か月で内定を決めた秘訣とは?
成功する人、失敗する人。二人の間にある違いとは
世の転職サイトには数多くの人たちの転職体験記が紹介されています。
それらの体験談を読んでいくと、成功した人、失敗した人にはそれぞれ以下のような傾向があることがわかります。
失敗する人 | 成功する人 |
目先の面白さしか見えない(視野が狭い) | 長期のキャリアビジョンがある |
興味を持てない仕事は受け付けない | どんな仕事にも面白さを見出そうとする |
自分の能力を把握していない | 自分の能力を客観視できる |
「会社が自分に合わない」が言い訳 | 「自分を仕事に合わせる」努力をする |
上の表を見比べてわかることは何でしょう。厳しい言い方かもしれませんが、失敗する人には3つの要素が決定的に足りません。
それは「客観性」「想像力」「好奇心」です。
「客観性」=今の自分に何ができて何が苦手か、自分は仕事に何を求めどんな職場が最適なのか。
上の例でいくと、「スペシャリストというよりマネジメントが得意」「ものを作るより直す方に魅力」など、しっかり自分の特技や特性を把握して活動に臨んでいます。
また自分を客観的に見ることができれば過去の転職遍歴を突っ込まれても慌てることはありません。その時の自分は何を求めてどう感じたのか。面接でもそれらを筋道立てて説明することができれば決して卑屈になることはないからです。
自分は何年後に◯◯の部門でマネージャーになる、◯◯の技術は数年後には主流になるから自分はそのスペシャリストを目指す、など短期スパンでも目標を立てることは必要です。 想像力のない人は目先のことしか見えません。「とにかく安定して、給料も良くて、何となく自分が成長できそうだから」あなたの将来像はどこにあるのでしょうか? いざ転職したはいいものの思った仕事と違う、そう感じた時あなたはどうするでしょう。 好奇心のある人なら「この仕事はどうしてこういうやり方なのか」「このシステムは一体どういう構造になっているのか」を知りたくなるでしょう。 ここで「自分のやりたい仕事と違う」と一切の興味関心をシャットアウトしてしまう人は結局何をやっても成長できません。 転職で成功する人というのは、自分の中にあるこれらの要素を活用しながら戦略なりビジョンなりを立ててキャリアアップを図っています。 とはいえ自分一人では難しいこともままあります。 自分の強みや弱み、本当に望んでいる事など、自分を客観的に見つめるのは意外と大変です。転職を成功させる人はただ情報を集めるだけじゃなく、外部の力も積極的に活用しています。 特定の業界に特化したサイトで情報を集めてもいいですし、転職サイトや転職エージェント、キャリアカウンセラーなどを利用して自分の価値を外から判断してもらうことも重要になってきます。 成功する転職にこぎ着けるのもなかなか大変ですね。ですが、成功するとはどういうことをいうのでしょうか。 私の父親の話で恐縮ですが、この人もまた非常に転職履歴の多い人でした。 高校卒業後自動ドアメーカーの営業から始まり、トラックやタクシーの運転手を経て自分の事務所を立ち上げました。ただ何をするための事務所かは自分でも分からなかったそうです。 なんでも当時池袋に住んでいた先輩のアドバイスで「とりあえず事務所を借りて電話を引け。仕事ができたら適当に連絡する」というから呆れたものです。 途中の話は長くなるので省きますが、その後ゲームセンターの基盤を扱う会社、レンタルビデオ店、カラオケハウス、居酒屋など様々な仕事を始めては、ダメだと判断したらさっさとやめてきました。 さすがに私の受験の時期にそれをやられた時には私も母も不安になりましたが当人はどこ吹く風。 決して大儲けしたとも成功したとも言えない半生でしたが、父親の転職基準はただ一つ。 「まだその地域で誰もやっていないことをやる」でした。そういう意味では満ち足りたキャリアと言えるでしょう。 まあ、おかげで息子の私もこんな転職体質になってしまいましたが。 そんな例を出すまでもなく、世の中には実に様々な仕事があります。会社の大小、給料の多い少ないで成功の尺度を計るのも良いですが、少しでも気になった仕事、やってみたい仕事があるなら次々と試してみても良いと思います。 ただしその時も上の表で示した「成功する人」のメンタリティを常に心がけるようにしてください。謙虚に、客観的に自分の能力を分析し、どんな事でも興味関心を失わず、自分の将来の姿をしっかり想像する習慣をつけましょう。 いかがでしょうか。 何度も転職を繰り返すというのは、もちろんその人の事情や考え方にもよります。 待遇、仕事内容、将来への不安、人間関係…。 まれに理由がなんだかよくわからない、とにかくどんな仕事をしてもすぐ嫌になってしまう、働く意思はあるのにどうしても続かない。という人がいます。そういう人に関しては一度心療内科などでカウンセリングを受けてみることをお勧めします。 ですが長い人生、働くということは自分や家族の生活を支え、時にはアイデンティティにも関わってくるほど大事なことでもあります。自分の納得のいく仕事をしたいと願い探し続けることは決して非難されることではなく、自分の事を病気ではないかなどと悩む必要もないのです。 最後に転職を成功させるためのアドバイスということを書きましたが、もちろん何をもって成功かというのも人によって異なります。 転職してキャリアを重ね、役職や給料が爆上がりなのが成功という人もいますし、何とか食べていける程度の収入でも自分にとって全身全霊を傾けられる仕事を見つけたという人が成功という人もいます。 人の数だけ生き方や価値観があります。何回転職したとか、どんな仕事をして給料がいくら増えたかとか、それらは「みんながだいたいそうだから」程度のものさしに過ぎません。 大事なのは自分のものさしを持つこと。そのものさしに合わせる努力を続けること。 そして繰り返しになりますが、常に大事なのは「客観性」「想像力」「好奇心」。 これは仕事探しだけでなく、人生そのものを充実させるためにも必要なことだと私は思っています。どうか後悔しない職業選びをしてくださいね。
後悔しないために。成功は自分が決める。
まとめ