職場環境の配慮義務についてご紹介!違反するとどうなるの?

突然ですが、あなたは職場で慢性的な長時間労働をしてはいませんか?

もしくは危険と隣り合わせのお仕事をされてはいませんか?

その他、自分の職場環境について「配慮が足りていないのでは?」と感じたことはありませんか?

もし職場環境が原因でケガをしてしまったり、体や心が病気になってしまったら。会社側に責任を問えることを知っているのと知らないのでは、自分や家族の人生を大きく変えてしまうことになりかねません。

働く皆さんにはぜひ知っておいていただきたい、職場環境の配慮義務についてご紹介します。

 

配慮義務の根拠となるもの

私たちを職場の環境から守ってくれる法律には、一体どんなものがあるのでしょうか。

職場に関する配慮義務の根拠としてあげられるのは、「労働契約法」第5条「労働安全衛生法」の大きく2つの法律があります。

労働契約法 第5条

労働契約法では、第5条で安全への配慮について以下のように定められています。

労働者の安全への配慮

第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:労働契約法のあらまし

この文章がどういう意味なのか、解説を交えて見ていきましょう。

ここでいう「使用者」とは、労働者の雇い主のことです。企業、会社のことですね。

「労働契約に伴い」は、雇い主は労働契約上にルールがなくても、雇ったと同時に労働者の安全配慮が当然の義務になりますよ、と規定したものです。

「生命、身体等の安全」には、命や体だけでなく、心の健康も含まれています。仕事によるストレスや不安なども対象なのです。

「必要な配慮」は、この法律上に決まったルールはないので、職種、仕事内容、職場などの状況に応じて配慮してくださいね、ということです。

つまり、「雇い主は契約上にルールがなくても、状況に応じて労働者の心身の安全を確保する義務があります」ということです。

具体的には、労働時間を管理したり、健康診断を受けさせたり、安全面・衛生面の管理をすることが、この法律で決められているのです。

皆さんの会社は大丈夫ですか?

労働安全衛生法

労働安全衛生法の目的は、下記のとおりとなっています。

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

引用:労働安全衛生法 第一章

こちらも解説を交えて見ていきましょう。

「危害防止基準の確立」とは、同法第4章に定められている安全基準・衛生基準のことを指します。第4章には、労働災害にあわないために必要な措置や禁止事項などが書かれています。

「責任体制の明確化」とは、同法第3章の安全衛生管理体制のことで、安全管理・衛生管理の責任者を決めて、必要な措置を講じるようにと細かく明記されています。

「自主的活動の促進の措置」は、法律をパーフェクトに守ったとしても、災害ゼロにはならないことを見すえて、法令順守だけではなく、労働者の安全と健康を確保するために必要な措置を取りましょう、というようなことです。

つまり、「この3つの手段で労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境をつくりましょう」ということなのです。

似ている2つの法律ですが、どちらも働く私たちにとって、なくてはならない規則なのだとわかります。企業には、このような決まりがあることをしっかり頭にいれておきましょう。

 

安全配慮義務違反をするとどうなる?

2つの法律があることはわかりましたが、これに違反するとどうなるのでしょうか。

まず「労働契約法」においてですが、これは労働者と使用者の間のトラブル防止のための、民事上のルールとなっているため、罰則はありません。ただし安全配慮義務を怠ると、この労働契約法を根拠にして、民法で裁かれるケースがあります。

罰則がないからといって、義務を怠ることはできないようになっていますね。生命に関わる事件の根拠にもなるだけあって(後述あり)、私たちにとってすごく重要な法律なのだと感じます。

次に「労働安全衛生法」ですが、第12章に罰則が定められています。罰則は、どの規定に違反したかで懲役の長さ・罰金の額が異なっています。20万円以下の過料のものから、7年以下の懲役や300万円以下の罰金など様々です。

罰則一覧

6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金

安全衛生教育実施違反 (労働安全衛生法59条3項)
病者の就業禁止違反 (労働安全衛生法68条)
健康診断等に関する秘密漏洩 (労働安全衛生104条、180条の2第4項)


50万円以下の罰金

衛生管理者の未選任 (労働安全衛生法12条1項)
産業医の未選任 (労働安全衛生法13条1項)
衛生委員会の未設置 (労働安全衛生法18条1項)
労働災害防止措置違反 (労働安全衛生法30条の2第1項、4項)
安全衛生教育実施違反 (労働安全衛生法59条1項)
健康診断の実施違反 (労働安全衛生法66条)
健康診断結果の未記録 (労働安全衛生法66条の3)
健康診断結果の非通知 (労働安全衛生法66条の6)
法令の非周知 (労働安全衛生法101条1項)
書類保存実施違反 (労働安全衛生法103条1項)
書類の未保存、虚偽の記載 (労働安全衛生法103条3項)

引用:ドクタートラスト 労働衛生法上の罰則一覧

こちらは、職場環境における細かな違反を、明確に定めています。健康診断を実施しなければ50万円以下の罰金が科せられるとは、皆さんご存じでしたか?思っていた以上に重い責任が会社にはあるのだなと、私は感じました。

 

安全配慮義務違反の判例

実際、これらの法律によって裁かれた判例があります。

ここでは2つの判例をご紹介します。

過度な長時間労働でうつ病を発症し自殺

【概要】
新入社員(当時24歳)のAさんはラジオ局に配属後、7月くらいから慢性的な長時間労働に従事することになり、休日出勤や徹夜での労働もありました。入社当初は、明朗活発で明るい性格だったAさんでしたが、不眠不休の日々を送るうちに元気はなく顔色も悪くなり、うつ病を発症することに。そして入社わずか1年5ヶ月のときに自宅にて自殺を図り自らの命を絶ちました。
これに対しAさんの両親が会社に対し損害賠償請求をした裁判です。

【結果】
1 会社は合計1億6800万円を両親に支払う内容で和解
2 会社は両親に謝罪するとともに、社内に再発防止策の徹底をする

【裁判のポイント】
1 長時間労働によるうつ病と結果としての自殺に一連の因果関係があると認定
2 上司(会社)はAさんの状況を認識していながらしかるべき措置をとらなかったことによる、 会社の安全配慮義務違反を認定
3 本人の性格を損害賠償算定の減額すべき要素としなかった

引用:カイシャのホケン

この事件は、大阪過労死問題連絡会のホームページにてより詳しく記載されていますが、読んでいるだけで胸が締め付けられる内容です。入社してすぐに残業続き、1年経つと帰宅できないもしくは帰宅後30分~1時間ほどで出勤していたというのですから。

会社のために身を削り、最低限のことすらできない生活をするなど、恐ろしくて考えたくもないです。遺族のことを考えると、自殺を図ることになるほど追い詰めてしまった会社の責任は、一生問われ続けてもいいのでは、とすら思ってしまいます。

作業中に指を切断

<概要>
自動車部品の加工作業に従事していた中国人研修生が、作業中に右手の人差し指を機械に挟まれて切断する事件が発生した。被害者は企業に対して損害賠償を求めた。

<結論>
当該機械は身体の一部を挟む可能性があるにもかかわらず、安全装置を取り付けていなかった。また、被害者は日本語をほとんど理解できないため、中国語で説明するか、もしくは中国語で記載した書面を交付し、その内容を正確に理解したかどうかを確認する必要があったが、企業はこれも怠っていた。そのため、作業環境を整えておらず安全配慮義務は不十分だということで、損害賠償責任があるとされた。

引用:リクナビHRTech

これは中国人が被害にあった判例です。この例もとても痛ましいですよね。慣れない外国で危険と隣り合わせの仕事をし、体だけでなく精神的にもとても苦しかったのではと想像します。

きちんと訴えを起こし、損害賠償責任を認めさせたことが唯一の救い、といえるでしょうか。

外国人観光客が増えている日本にとって、外国人労働者は大切な存在です。その意味では、日本を支えるための法律といっても過言ではないと思います。

 

まとめ

この記事のまとめ
  • 職場環境の配慮義務についての法律は「労働契約法」「労働安全衛生法」の2つある
  • 違反をすると事業主に対して罰則がある
  • 配慮義務違反の判例

私たちが心身ともに安心・安全で働く上で、大切なことをお伝えしました。

ただ、会社にも責任はありますが、自らの行動で事件や事故を防ぐ努力をするのも大切なことだと思います。これを機にご自身の会社の体制を見直し、必要に応じて会社へ改善を提案してもいいかもしれませんね。そして、健やかな社会人生活を送りましょう!

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