
そんな私の目に飛び込んできたのが、経済アナリスト・森永卓郎氏の『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』でした。本書は、2003年に発刊され大反響を呼んだ『年収300万円時代を生き抜く経済学』に加筆・修正して2019年に発売されたものです。
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- 「年収500~600万円」が普通だった一般のサラリーマンがなぜ「年収300万円」にまで転落したのか
- 「年収300万円時代」の先にはどんな未来が待っているのか
- 「年収300万円時代」を生きる私たちにとって、本当の豊かさとは何か
こんなことが書いてある本です。
今回は、『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』の書評をしてみたいと思います。
私と同じように収入がなかなか上がらず、将来の不安を抱えているサラリーマンの方は必見です!
Contents
著者について

著者の森永拓郎氏は、著名な経済アナリスト、獨協大学経済学部教授です。
東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現・日本たばこ産業)に入社しました。その後、日本経済研究センター、経済企画庁、UFJ綜合研究所などに勤め、現職に。日本経済研究センター時代に、“格差”の経済分析を担当した経験がきっかけになり、本書『年収300万円時代を生き抜く経済学』を書くことになったのだとか。
他には、『ビンボーでも楽しい定年後』(中央公論社)、『老後破産しないために、年金13万円時代でも暮らせるメタボ家計ダイエット』(扶桑社)、『庶民は知らないアベノリスクの真実』(角川SSC新書)など、多数の著書を書いています。

「オタク」「コレクター」としても有名な森永氏。趣味が高じて、50年以上も集め続けたというコレクション約10万点を展示する博物館「B宝館」が2014年、東京にオープンしました。博物館の開館は、同氏の長年の夢だったそうです。
“ミニカー”や“コカ・コーラの空き缶”、“マクドナルドのハッピーセットのおもちゃ”など、まさに“B級”コレクションの数々が、一部マニアの熱狂的な支持を受けています。
ですが、博物館があまりにもマニアックだったため、経営が振るわず、合計3億3,500万円にものぼる多額の借金を抱えてしまうという経済アナリストとして笑えない話も。

そんなおっちょこちょいな一面もある森永氏ですが、経済分析に関しては一流のプロであることは間違いないでしょう。
『年収300万円時代を生き抜く経済学』が発刊された2003年当時、一般のサラリーマン家庭は年収500~600万円が当たり前。まさか「年収300万円」が日本のスタンダードになるなんて、誰一人思わなかったんですから。
森永氏の予言から15年以上経った現在、年収300万円~400万円の人の数は最も多くなっています。(2番目に多いのが、年収200万円~300万円の人)。
つまり、森永氏が15年前に予言した「年収300万円時代」は、事実、到来したのです。
本を書くに至った背景
本書発刊を遡ること2年前の2001年、小泉純一郎首相率いる小泉内閣が発足しました。
「古い自民党をぶっ潰す!!」の掛け声のもと、国民の熱狂的支持を受けて成立した小泉内閣は、経済改革「聖域なき構造改革」を推し進めました。
郵政事業の民営化、道路関係四公団の民営化等、政府による公共サービスを民営化などにより削減し、市場にできることは市場にゆだねること、いわゆる「官から民へ」、また、国と地方の三位一体の改革、いわゆる「中央から地方へ」を改革の柱としている。
著者の森永氏は、この「聖域なき構造改革」が日本社会の格差を拡大させたと分析しています。
小泉純一郎元総理大臣と竹中平蔵経済財政担当大臣のコンビが推し進めた規制緩和を中心とする構造改革により、それまでの日本的な雇用環境が打ち破られていった。〔中略〕2割程度だった非正社員比率は、現在では、ほぼ倍増している。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p17
日本経済研究センター時代に、“格差”の経済分析に傾倒し、様々な状況証拠から格差社会の到来を予感した森永氏です。当時の政治の動きを見て、予感は確信に変わっていったのでしょう。

著者が本書を著したのには、経済分析により格差社会を予感したことの他に、もう一つ理由がありました。
森永氏にはオタク趣味・コレクター趣味があることは先に紹介しました。だから、著者にとって、コレクター仲間との交流が何よりも楽しみでした。コレクターはそれほど儲かる趣味ではないので、彼の周りにはいつも“年収の少ない人たち”がいました。
格差拡大で最も被害を受けるのは、そんな“年収の少ない人たち”でした。彼にはそれが耐えられなかったのです。
デフレ不況は、弱い人たちを、私の仲間たちを傷つけている。私はそれが耐えられないのだ。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p254
年収500万円~600万円が普通だった2003年当時、「年収300万円時代」の到来という衝撃的な予言を公表した背景には、「仲間が経済的に没落していく」という著者の危機感があったのかもしれません。
今にして思えば、我々普通のサラリーマンに対する警告とも取れます。

本の内容
本書は、2003年に出版され社会に大きな衝撃を与えた『年収300万円時代を生き抜く経済学』に、最新の知見を元に加筆修正を加えた「増補版」です。旧版との最も大きな違いは、「年収10万円」時代の到来という新たな未来予想が加えられていることです。
[itemlink post_id=”6866″]第1章 日本に新たな階級社会が作られる
第2章 年収300万円時代がやってきた
第3章 年収300万円時代の本当に「豊かな」生き方
第4章 年収300万円時代を幸福に暮らす「知恵と工夫」
第5章 本当の幸せとは?私自身の「年収300万円時代」
本書をジャンルでいうと「経済学」の本となるでしょう。なにやら難しそう、と思うかもしれませんが、文章は平易で、専門用語もきちんと説明があり、経済に疎い私でもスラスラと読み進めることができました。
学問の本というよりは、「年収300万円時代」がやってきた背景の説明や、そのなかで私たち一般人はどう生きれば豊かな人生を送れるか、ということが主題になっています。
「年収300万円時代」の到来。そして、未来は「年収10万円時代」!?
序章~第2章までは、小泉内閣による「聖域なき構造改革」によって、いかに格差が拡大したか、日本の国力が凋落したかが詳しく書かれています。
次の漫画をご覧ください。


引用:Smart FLASH 森永卓郎「年収10万円時代の生き方」マンガで教えます!
これは、森永氏本人が寄稿した記事に掲載された漫画です。
簡単に説明すると、小泉政権(2001~2006)による構造改革の目玉施策「規制緩和」と「不良債権処理」により、“下方向の格差拡大”と“上方向の格差拡大”という2つの格差拡大が起こりました。
2つの格差拡大
- 下方向の格差拡大(規制緩和)
正社員が非正規社員に転落し、正社員―非正規社員間で所得格差が拡大する。 - 上方向の格差拡大(不良債権処理)
土地価格の担保割れによって不良債権を抱えた大企業が破綻させられ、それを買い取った“ハゲタカファンド”と呼ばれる投機家が台頭。ぼろ儲けした彼らが新しい金持ち層になる。(日本は国力を奪われ、外資に食い荒らされることに)
かなりざっくりしたまとめ方になりましたが、このような上下2方向からの格差拡大により、「年収300万円時代」は到来しました。著者はさらに、今後の展望をこう予想します。
すなわち、人工知能とロボット技術の台頭により、多くの人が仕事を奪われる。
すると、お金を儲けられるのは知的創造的な仕事ができるほんの一握りの人間だけになり、多くの一般庶民は「ベーシック・インカム」という形で金持ちからおこぼれをもらい、食うのに困らない最低限の生活をすることになるだろう、と。
これが、著者が次に予言する「年収10万円時代」です。
年収10万円時代の様子を、所得格差が絶大に激しいプロ野球や吉本興業を例に挙げて、森永氏が解説している動画がありました。
年収10万円時代については、8:40~です。
年収300万円時代の豊かな生き方
第3章~第5章では、所得格差の拡大が避けられない状況を迎えた日本社会で、どう生きていけばいいのか、について書かれています。序章~第2章までが、森永氏の経済アナリストとしての分析であるならば、第3章~第5章は森永氏の人生観や生き方を実感できる章になっています。
ここでの著者の主張は「積極的に諦める」ことで豊かな生活を送ることができるということです。
現在は、「年収300万円時代」から「年収10万円時代」に向かう真っただ中。今後、なんの専門性も持たない“ただ年齢を重ねただけ”の人材は、就業機会をますます失っていくでしょう。
私たちは、失業というリスクに、自己責任で備える必要があるのです。
著者は、いつなんどき失業や収入減少の憂き目に遭ってもいいように、「生活レベルを下げる備え」をすることを説きます。

本書には、具体的な「消費の見直し」や「支出の見直し」の方法が書かれています。興味のある方はぜひ本を手に取って読んでみてください。
また、当サイトでも、節約術について紹介しています。
これからの日本社会は、一握りのお金持ちが富の大半を手にする社会になります。必死に努力してお金持ちになる“アメリカンドリーム”的なサクセスストーリーは、残念ながらあまり望めそうもありません。
なぜなら、お金持ちはなるべくしてお金持ちになるからです。
お金持ちの家に生まれた子どもは、幼少時から最高水準の教育を受けることができます。また、物心ついた時から彼らの周りは社会的ステータスの高い人ばかり。お金持ちはお金持ち同士で人脈を築き、一般庶民が間に割って入る余地はほとんどありません。
あなたの周りでも、努力よりもコネがある方が有利な例を見たことはありませんか。

森永氏は、「年収300万円時代」を豊かに生きる戦略を、見栄やプライドを捨て、勝ち組や成功を期待しない「積極的に諦める」生活防衛術と名付けました。
暮らしのムダを削り、リスクに備え、家族との時間や趣味など、本当に価値を感じることを大切に生きること。それこそが、「年収300万円時代」の幸せな生き方なんだ、ということです。
「幸せ」になるのは、実はそれほど難しいことではないのだと思う。ご飯を食べて、おいしいと思ったら「おいしいね」と言ってみる。きれいな女性を見たら「きれいですね」と言ってみる。それだけで、実は人生は、ものすごく変わるのだ。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p271
森永氏は、世間一般にはお金持ちに属する人でしょう。ですが、彼はお金持ちとは馴染めないといいます。本当に友情を感じるのは、同じ趣味の“収入が低い人たち”と交流している時だと。
著者の、収入が低くても、生活を工夫しながら好きなことに打ち込んで輝いた人生を送る仲間たちとの交流が、「積極的に諦める」生活防衛術の提唱に繋がっているのではないかと私は思います。そういう意味では、本書後半の第3章~第5章は、森永氏の人生哲学が垣間見える章だといえます。
この本で書かれていることをまとめます。
序章~第2章では、「年収300万円時代」到来の背景や、その実態が書かれている
第3章~第5章では、「年収300万円時代」を豊かに生きる方法や考え方が書かれている
しがないサラリーマンが格差社会を生き抜くには?~家族を守るために私たちにできること~

激動の平成時代、日本社会では、「年収300万円」が当たり前になったように、急激に格差が拡大しました。これについて、著者の森永氏は、NHKのインタビューでこう述べています。
私は下方向の格差拡大は予想していたんですけれども、これほどとてつもない数の富裕層が日本に生まれるとは夢にも思っていませんでした。そこはまったく予想しなかった事態ですね。ちょっとした運とか思いつきとかで、若者が一夜にして何億、何十億っていうお金を稼いでしまう、サラリーマンが一生かけて稼ぐお金の10倍以上の金を一瞬で稼いでしまうなんていう事が起こるとは思いませんでした。
引用:NHK NEWS WEB 森永卓郎さん「とてつもない大転落」
そして、先の未来では、人工知能やロボット技術の発達によって、多くの人が雇用を奪われる「年収10万円時代」がやってくると予想しています。
そのような時代状況の中、私のような一般のサラリーマンはどのように生きていけば良いのでしょうか。
そのヒントを、『序章 「年収300万円」から「年収10万円」への過渡期にある日本』『第2章 年収300万円時代がやってきた』『第3章 年収300万円時代の本当に「豊かな」生き方』からご紹介します。
「年収10万円時代」がやってくる
森永氏が到来を予感する「年収10万円時代」とは、どのような未来なのでしょうか。人工知能とロボット技術の台頭により「実に約9割もの人々が職を失う」という野村総研の予測を引用して、
一握りの超・富裕層が出現する一方で、大部分の庶民はさらに年収が激減する。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p27
そんな社会になると予想しています。困ったことに、「年収10万円」では食べていくことができませんよね。では、私たち一般庶民は飢えに苦しむ貧しい生活を強いられるようになるのでしょうか?
どうもそうではないようです。
これを社会的に行うのが「ベーシック・インカム」制度だ。生活保護など現行の社会福祉制度をなくし、すべての人に生活を保障する最低限度額を支給するというものだ。・・・〔中略〕・・・私は、将来、このベーシック・インカムが導入される日が来ると思っている。ベーシック・インカムのような制度があれば、給料が下がっても年金が下がっても、絶対的貧困にはならない。最低限、食うことはできる。後は、生活費をコントロールする技術さえ身に付ければ飢え死にの恐怖はまずない。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p28
つまり、私たち一般庶民は、ベーシック・インカム制度の導入により、超・富裕層から「富の再分配」を受けて、働かなくても困らない生活は保障されるというのです。このことは、食うための仕事から解放されることを意味します。
「あくせく働かなくても食べていける社会」の到来です。
著者は、そんな社会では、“3つの生き方”があると続けます。
- ハゲタカになる
- 奴隷になる
- アーティストになる
1.「ハゲタカ」になるとは、わずかな望みをかけて、富裕層に上り詰めることをひたすら目指す生き方です。
2.「奴隷」になるとは、かつての「中流層」に固執して、どんな嫌なことも我慢して会社にしがみつく生き方です。
3.「アーティスト」になるとは、貧乏でも好きなことに打ち込んで、精神的な充実を求める生き方です。ここでいう「アーティスト」は、何も音楽家や芸術家になることだけを指すのではなく、能力や感性を売りにするクリエイティブな仕事全般を意味します。
あなたはどれがいいですか?私は、断然3.アーティストになる道が魅力的に思えます。
たしかにベーシック・インカムで生活が保障されるとはいえ、「年収10万円」ですから生活は楽ではないでしょう。ですが、生活の心配をすることなく好きなことに一心に打ち込む生き方は素敵だと思いませんか?

現代はインターネットを通じて、誰とでも手軽に繋がることができる時代です。自分の好きなことや得意なことを売り物にするのも簡単です。
例えば、私は昔、「ココナラ」というスキルを売り買いできるサイトを利用して、副業として文章を書く仕事をしていました。
「ココナラ」では、文章を書くことの他に、似顔絵やアイコンなどの絵を描く、英文を日本語に翻訳する、Webデザインをする、作曲する、株の相談を受ける、手作りのアクセサリーやバッグなどを売る、などなど、多くの「好き」や「得意」が売り買いされています。
参考:みんなの得意を売り買い スキルのフリーマーケット ココナラ
「好きこそ物の上手なれ」という格言がありますが、現代は、一般人が好きなことや趣味を商品化し、収入を得ることだって可能な時代なのです。
そう考えると、「年収300万円時代」から「年収10万円時代」の過渡期にある今、私たちは仕事以外にも好きなことや得意なことを見つけておくことが大切だと思います。それこそが、私たちが生涯に渡って活躍できる居場所であり、生きるための糧になるのですから。

“失業が当たり前の時代”に向けて
「収入10万円時代」に向けて、格差拡大はますます大きくなるでしょう。なにせ我々に待っているのは、国民の9割がいわゆる「負け組」に転落する未来です。あくまで予想にすぎませんが、それに近い状況になるのは間違いないと感じます。
そんな超・格差時代に向けて、我々サラリーマンが家族や暮らしを守るために、今からやっておくべきことはあるのでしょうか?
サラリーマンにとって最も必要なことは、キャリアを積むこと=実務能力を磨くことです。ただ年齢を重ねて何もキャリアがないということになれば、もし失業してしまった場合、非正規労働者の道しか無くなってしまいます。(しかも、非正規雇用の仕事のほとんどは人工知能に最も早くとって代わられる)
そうなると、「ベーシック・インカム」制度実施を待たずして、家族を露頭に迷わせてしまうことにもなりかねません。
結局、サラリーマンにとって何が売り物になるのか。資格でも英会話の能力でもない。ズバリいうと、それは仕事のなかで積み重ねてきたキャリア、実務能力だ。それしか売れるものはない。特に手に職を持たないホワイトカラーの場合はそうだ。・・・〔中略〕・・・「経理のプロ」でも「苦情処理のプロ」でも「総会屋対策のプロ」でも何でもいい、自分ならではといえる売り物を身に着ける。それがつまりキャリアなのだ。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』pp126-127
とはいえ、一生の仕事を見つけるのは簡単ではありません。実際、私も「コレ!」という仕事を見つけるまで、8回も転職を繰り返しました。当サイトでは、あなたにピッタリの仕事を探す上で役立つ記事も掲載しています。ぜひ参考にしてみてください。

以上から、私のようなしがないサラリーマンが今からやるべきことは、次のようになります。
- 好きなことや得意なことを見つける(できれば副業などでお金に換えてみる)
- 一生の仕事を見つけて、ひたすら専門性を磨く
格差社会を幸福に生きるために

著者の森永氏は、これからの格差社会を生き抜くためには、「積極的に諦める」生活防衛術が必要だと説いています。
これからは、一部の成功者を除いて大半の人たちの給料は下がっていく。さらに追い打ちをかけるように税金や社会保険の負担は上昇していく。そのなかで生き残るためには、自分の生活を見直して、低コストで生活できるようにしておくことが第一だ。・・・〔中略〕・・・お金がないならないなりに、生活の仕方を変えていけばよい。・・・〔中略〕・・・これは「積極的に諦める」生活防衛行為なのだ。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』pp244-246
ここでは、『第4章 年収300万円時代を幸福に暮らす「知恵と工夫」』と『第5章 本当の幸せとは?私自身の「年収300万円時代」』を参考に、格差社会を幸福に生きる方法について考えてみたいと思います。
一度上げた生活レベルを落とすのは難しい?
著者は、生活レベルを上げない、または、いざという時に備えて、下げる用意をしておくことを推奨しています。
やり方は、
- 支出を減らす
- 収入を増やす
という2つの方法です。
具体的には、住宅ローンや生命保険の見直し、食費の節約、資産運用、副業など、節約術や副収入を得る方法です。
中身は本書に譲るとして、ここでは、『「積極的に諦める」生活防衛術』を駆使して生活レベルを落とすことは、現実的には難しいんじゃないの?という疑問点を深掘りしたいと思います。

こちらのデータをご覧ください。これは、マーケティングリサーチ会社「シタシオンジャパン」が1520人を対象に、増税後の消費意識に関するアンケート調査を実施して得られた結果です。

引用:シタシオンジャパンHPより 「増税後もできるだけ生活水準は下げたくない」消費税増税後の意識調査
多くの人が、「増税後に商品選びは慎重にするけれども、生活水準を下げたくない」という意識を持っていることがわかります。
こちらは「一度上げた生活レベル、下げられますか? 」という質問に対する声です。
うーん。
今主人が設計した戸建マイホームですが
アパートでユニットバスとかには
無理ですね。
私は下げれないかも。
我慢するなら化粧品ランク落とすとか
外食しないとかが限界かも。
引用:ガールズちゃんねる 一度上げた生活レベル、下げられますか?
今考えると実家は比較的裕福だったから、夫と同棲始めて下がった生活レベルに慣れるまで数年かかった
というかまだ正直慣れてない
今まで通りにしようとするとムダ遣いと言われるし、一緒に頑張りたいから一生懸命我慢してる
その代わり料理も雑貨も色々手づくりして生活が楽しくなるようにしてるよ
引用:ガールズちゃんねる 一度上げた生活レベル、下げられますか?
無理です。見栄晴なので(-。-;
引用:ガールズちゃんねる 一度上げた生活レベル、下げられますか?
人は一度上げた生活レベルを下げるのに、かなり抵抗を感じるようです。とくに衣食住は暮らしの中心になるので、頑張って下げられるとしても「外食」や「化粧代」などが限界です。

人はなぜ生活レベルを下げられないのでしょうか?
不便になりそうだから
見栄やプライドがあるから
快適に暮らせなさそうだから
理由は色々とあるでしょうが、この現象を学問的に解説してみます。
『ラチェット効果』
経済学でラチェット効果という言葉があります。
景気悪化で消費マインドは低下するが、消費性向は上昇してしまうこと。景気悪化で所得が減少しても、消費者は現在の消費水準を維持しようとする。景気後退時でも短期間に生活水準を変えることは難しいため、それまでの消費行動を踏襲するケースが多くなり、貯蓄を取崩して消費水準を維持することになる。ラチェットとは歯止めのこと。景気を下支えする役割を果たす。
つまり「人は不景気や増税などで収入が減っても生活水準を落とすことは難しいから、貯金を切り崩すなどして今までの消費スタイルを維持しようとする」現象のことをいいます。

さらに心理学では、こんな概念で説明することもできます。
『現状維持バイアス』
現状維持バイアスとは、以下のように説明されます。
今、仮に、何かを変化させてしまえば、何らかの「利益」も生じるかもしれないけれど、「損失」が生じる可能性もあがる。ひとは「利益」と「損失」が目の前に差し出されると「損失」の方がすごく大きなもののように見えてくる。
つまり、得られるかも知れない「利益」よりも、今から失ってしまう「損失」の方が、気になって気になって仕方が無い。かくして、
「何かを変化させるくらいならば、現状維持することの方が得じゃねーか」と「現状維持の価値」を高くみつもるバイアスのかかった判断が生まれます。
引用:NAKAHARA-LAB.net 「現状維持バイアス」とは「約束された沈没」である!? : 船底に穴があいているのに、カクテルパーティをぶちかます「ウェイウェイ豪華客船」の謎!?

生活レベルを落とすことで「失業や収入減少のリスクに備えられる」とか「増税されてもへっちゃら」というメリットがあるとしても、人の目には「今、目の前の不便」がとても恐ろしく映るのです。
- 経済学 ラチェット効果
- 心理学 現状維持バイアス
各分野における研究結果からも「生活レベルを落とすことは難しい」ことは証明されているのですね。見栄やプライドのために、借金地獄に陥ってまで良い服を買ったり、良い車に乗る人がいるのもうなずけます。
とはいえ、私たちになすすべがない、というわけではありません。「住めば都」という格言がある通り、人は慣れる生き物です。
近々大きな増税が控えています。これを良い機会だと受け取り「いざ年収が下がって生活を変えねばならなくなった時に備えて」まずはできることから生活を変えて慣れていくことをおススメします。
具体的には、
いつもより安い食材を選んでみる
日用品を安いものに変えてみる
薬をジェネックに変えてみる
飲み会の頻度を減らす
などなど、比較的負担が少なく、今すぐできることはたくさんあります。挑戦してみて、それで問題がないとわかったら、心理的にも変化への恐れは少なくなるのではないでしょうか。
また、そもそも人間は変化を嫌う生き物なのですから、多少羽振りが良くなったとしても、最初から生活レベルを上げすぎないことが大切です。増えた分のお金は、少しだけ楽しみに使い、残りは貯蓄や資産運用に回してとっておきましょう。
どうすれば格差社会を幸福に生きられるのか?

結論から言えば、生活レベルを落としても、格差社会で豊かさを感じて生きる方法は、「価値観を転換すること」です。
いまの時代のキーワードを一つだけ挙げれば、「不安」ということになるだろう。・・・〔中略〕・・・9割の人が「負け組」になり収入も大幅に減るとなれば、不安はますます強まって当然だ。だが、大切なのはやはり人生の価値観の転換なのである。
引用:『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』p159
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授は、「幸せの因子分析」の研究で、幸せになるために必要な要素を分析しています。
それによると、以下の4つの要素が幸せになるために必要だと示されました。

1つ目が、「やっていみよう」因子です。「自己実現と成長の因子」とあるように、自分の強みや強みが社会に活かされること、そのことが自己実現に繋がることが幸せの第一条件です。
2つ目は、「ありがとう!」因子です。「つながりと感謝の因子」である「ありがとう!」因子は、他者との繋がりから生まれる「愛情」や「友情」、「感謝」といった感情が幸せに影響することを意味します。
また、他者との繋がりは、人数が多いかどうかよりも、多様な交友関係があるかどうかが重要だと前野教授はいいます。つまり、気が合う特定の人ばかりと付き合うよりも、いろいろなところで多種多様な価値観、特徴を持った人たちと付き合った方が、幸せになれるのです。
3つ目は、「なんとかなる!」因子です。悲しいことやツライことを引きずらず、明るく、ポジティブになろうと努めることで、幸せになることができます。
4つ目は、「あなたらしく!」因子です。他人との比較をやめ、自分自身の価値観を追及することで幸せに一歩近づきます。たしかに、いつも誰かと競争しようと目をギラつかせている人より、マイペースな人の方が幸せそうに見えますよね。
以上が、幸せになるために必要な4つの要素です。「自己実現」「他者との繋がり」「前向きさ」「自分らしさ」。どれも、たとえお金がなくても努力と工夫で手に入れられるものばかりですね。
お金もたしかに大切ですが、「お金中心の価値観」から「真の幸せを追求する価値観」に転換することが、格差社会を生き抜く上ではなによりも重要です。

以上をまとめると、こうなります。
一度上げた生活レベルを下げるのは難しいため、そこそこの暮らしで満足できるようにしておく
幸せ志向の価値観を大切にする
まとめ
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』では、「年収300万円時代」の予想が当たっただけでなく、「年収10万円時代」の到来という衝撃的な予言までしています。
実際にそうなるかどうかは素人の私にはわかりませんが、「年収300万円」が当たり前になり、さらに今後、増税などにより一般庶民の生活が苦しくなることは容易に想像できます。
自分自身の実感として、理不尽に耐えながら会社にしがみついたところで、果たして昔のように安泰や年収アップに繋がるのかは疑問です。やはり著者の森永氏が言うように、「もしも」に対する備えと、価値観の転換が必要だと思います。
『年収300万円時代を生き抜く経済学 増補版』を読んでみて、難しい経済の本というよりは、来るべき「超・格差社会」を一般庶民がどう生きるべきか、が示されるハウツー本のような印象を受けました。
私と同じように、漠然とした将来への不安を抱えているサラリーマンの人は、一読の価値がある本だと思います。
著者の森永卓郎さんは、テレビやラジオでもご自身の予測や考えについて多く語っておられる方です。「本を買うのはちょっと・・・」という方は、ネットやYOUTUBEでも森永氏の考えを知ることができるので、ぜひ検索してみてください。


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