転職サイトを運営しているにもかかわらず、最近意外なほど「働きたくない」という相談に乗ることが多くなりました。
いや、ここは自分に合った仕事を探したい人が見るサイトなんだけどなぁ…。と、おや誰か来ましたね。

おやおや、大変です。では今日はかわいい後輩の悩みを解決してあげましょう。
Contents
働きたくない。その理由は?


働きたくない理由にはどういうものが挙げられるでしょうか。
- 給与・労働時間など待遇面への不満
- 仕事がうまくできるか不安
- 社会的に不適合
- 対人関係
- やりがい
- 仕事が面白くない(なさそう)
- 働きたい仕事がない
- 何のために働くのかわからない
人間関係や給与、労働時間、労働環境やパワハラなどの問題はどちらかというと対外的な要素が強く、ある程度努力をして改善することは可能です。
下にいくつかの記事をご紹介します。
対して性格的に社会に適応できない、やりがいがない、何のために働くのかわからない、というのは本人の中にある要素が強く、環境を変えてどうにかなる話でもなさそうです。
漫画界のレジェンド、藤子不二雄A先生がなんと1971年に発表した短編漫画「明日は日曜日そしてまた明後日も……」は、まさにそんな社会や会社組織に対する協調性や同化性がない青年の悲劇を描いたものです。
そしてこの主人公・坊一郎のような若者を称して初めて「引きこもり」という言葉が生まれたのが1989年、つまり平成元年のことです。
性格上社会や集団に適応できない人というのは現在では珍しいことではなくなりました。ただこうした人々への理解は昔は全くありませんでしたし、今でも十分ではありません。
現在でもこうした人たちへのケアや社会復帰を促す一環として就労支援も行われています。
ですがそこまでして働かなければならないのでしょうか。いったい私たちは何のために働いているのでしょうか?
人はパンのみで生きる?
働きたくないのはあなただけではなかった
ここからは、主に「人は何のために働くか」に焦点を当てていこうと思います。
以下は内閣府の調査です。
働く目的は何か聞いたところ,「お金を得るために働く」と答えた者の割合が51.0%,「社会の一員として,務めを果たすために働く」と答えた者の割合が14.7%,「自分の才能や能力を発揮するために働く」と答えた者の割合が8.8%,「生きがいをみつけるために働く」と答えた者の割合が21.3%となっている。
前回の調査結果と比較して見ると,「お金を得るために働く」(48.9%→51.0%)と答えた者の割合が上昇し,「社会の一員として,務めを果たすために働く」(16.1%→14.7%)と答えた者の割合が低下している。
引用:平成26年度 国民生活に関する世論調査 2調査結果の概要|内閣府

この調査から見えてくることは、お金(生活)のために働くというのが圧倒的に多いこと。それに比べて高齢世代を除いては自己実現、達成感、社会的地位・評価、社会とのつながり、自分の能力、経験のため(キャリアアップ)といった要素は意外と少ないことがわかります。
その結果、意外と言うべきか言わざるべきか日本人は世界でも有数の「仕事嫌い」な国民であるそうです。
日本人は、「余暇が減るんなら仕事なんかしたくない」と考えているひとの割合がきわめて高い。すなわち、「世界でいちばん仕事が嫌いな国民」なのだ。
引用:日本人は世界でいちばん仕事が嫌い – 橘玲 公式BLOG
働かなければ待っている不幸
何となくわかる気がします。では本当に働かなければいったいどうなるでしょう。
仕事をしようがしまいが、私たちは物を食べなければ生きていけません。食費、住居費、光熱費、通信費、雑費etc…。こうしたもののための収入が一切無くなれば最悪ホームレスになってしまいます。
「実家で親と同居しているので働かなくても平気」というあなた。それ、ニートっていうんですよ。今はまだいいかもしれませんが、それがいつまでも続くようでは問題です。先程の漫画の主人公、坊一郎がもし今でも引きこもっているとすれば70歳近くになっているはずです。自分が同じようになるところを想像してみてください。
何ということでしょう。日本人にとって仕事とは生きるための手段を得ることであり、むしろ働くことは嫌いだけど生活するために嫌々やっているという考えが大部分だということになります。
いつから日本人はこんなに仕事嫌いになってしまったのでしょうか?そんなに昔から働くことが嫌いな民族だったのでしょうか?
人間の労働観は社会や環境の変化で変わってきた
国や地域によって仕事に関する意識が違うということは、その国の社会事情、環境によって違ってくるということ。ということは、時代が違えば働くことへの意識も変わってくるということです。
かつてキリスト教では、労働は神からの罰でした。カトリック国であるイタリアやスペインで失業率が高くても国民がわりと陽気なのはその影響でしょう。
それが宗教改革でプロテスタントが登場すると、働き、稼ぐことが神の御心にかなうことになってしまいます。その最たる例がアメリカです。
では日本ではどうでしょうか。
明治から戦時体制,そして戦後の混乱へと至る激変の時代の中で,労働者の仕事に対する意識,日本人の労働観もその時々の社会状況に対応して大きく変化してきている。言い換えれば,勤勉性,集団主義に基づいた職場組織に対する忠誠心や奉仕精神は必ずしも一貫性を持っているわけではない。従ってそれが中核をなしている労働観を一般国民の労働観の原像とみなすには,少なからぬ疑問が生じるのである。
(中略)
もちろん,働くことは収入を得て生計を維持する重要な手段であるのは事実であるが,生計を維持する事がもはや仕事をすることの唯一のあるいは一番大切な目的ではなくなってきた。特に若者にとっては,収入よりは仕事そのものがより大事なものであるという考え方が広まり,反対に生計のために仕事や会社に不満があっても我慢しなければならないという考えは 次第に薄くなってきている。
引用:「日本人の労働観」研究の歴史的変遷 : その位相と今日的課題 杜, 新(Du. Xin) 慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学心理学教育学. No.52 (2001. ) ,p.39- 49
つまり、日本人が勤勉だとも仕事好きとも言えないし、収入さえあれば嫌だったら我慢しなくてもいいということです。
その一方で「仕事そのもの」を収入より優先するとはどういう事でしょう?
それはこれからおいおい説明していきたいと思いますので、記事を最後までお読みいただけるとお分かりになるでしょう。
おおよそ,明治以来の歴史から見れば,人々の観念の変化は,政府の政策に導かれた産業構造や生産様式の変動より遅い傾向がある。特に近代化発展の早期,明治・大正時代ないし戦争直後,政府主導の下で急速に推進されている産業化過程に比べて,人々の労働観の変化はわりと受動的な様相を呈していた。しかし,人々の意識は完全に社会的状況に左右されているわけでもない。産業構造や社会的変動に従い変わっている人々の意識や観念は,さらに進んで社会の生産や生活の様態に影響を及ぼしている側面にも注目しなければならない。
引用:「日本人の労働観」研究の歴史的変遷 : その位相と今日的課題 杜, 新(Du. Xin) 慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学心理学教育学. No.52 (2001. ) ,p.39- 49
簡単に言えば「人々の意識や考え方は社会の変化に追いつくのに時間差があり、その後人々の意識が変われば逆に社会の常識にも影響を与える」ということです。
これはよくわかりますね。
先ほどの漫画の坊一郎が「ひきこもり」として社会のあちこちで見られる病気らしいと世間に認識されるまで実に18年もかかっています。
またバブルの頃にカッコいいとされた「24時間戦えますか」なんてCMを現代に流そうものなら「24時間働けだなんて非人道的だ、ブラックな労働を推進するのか」と大炎上すること間違いありません。
しかし今の社会がこういう流れを受け入れるまでの間に、残念ながら多くの過労死や自殺者が出てしまいました。それでもいまだに社会の変化を受け入れられない人々の抵抗が続いているのが平成の30年だったと言えるかもしれません。

「働きたくない」は昭和的労働観へのアンチテーゼ
でも同じ会社で一生働くことが当然だった時代への反発はあると思うよ。
現在の現役世代の親世代、高度成長期~バブル期の働き方を「昭和的労働観」としましょう。それは典型的なサラリーマンが社会の中核を作った世代です。
ここでは多くの大事なものがムダにされています。
毎朝殺人的な通勤電車に押し込まれて皆同じ方向への会社へ向かい、非効率的な仕事で長時間残業を続け、終わった後も行きたくない上司や同僚との飲みに付き合わされて帰宅は終電。休みの日は会社の仲間とゴルフか、さもなくば一日中家でゴロゴロ。
時間をムダにして、場所に縛られ、意味のない付き合いや繋がりに私生活まで左右され、非効率で目的のない仕事に価値を感じられない。
豊かで合理的な時代に育ち、これらを大事にする現代の若者が、こんな価値観を未だに捨てきれない組織や社会に対して「働きたくない」という拒否感を示すのは至極当然のことなのです。
新しい働き方を提唱するロールモデル、インフルエンサーの続出
そんな働き方に異議が唱えられるようになったのがバブル崩壊後、インターネットの普及が始まった頃からです。
この時代から、規制緩和により非正規雇用者が増加しだし、社員になりたくてもなれない人たちが増えます。
またグローバル経済の時代を迎える中で、日本の労働者の「生産性の低さ」が指摘されるようになってきました。
私たちがいくら長時間一生懸命働いてもさっぱり給料が上がらなくなったのは、それまでは何とかなっていたムダな仕事が通用しなくなってきたせいだというわけです。私たちはザルで水をすくい続けていたのです。
そんな時代に風穴を開けようと、この頃から現在に至るまで、様々なタイプの働き方が提唱されるようになります。
これらは一握りの先進的な人々、後に「インフルエンサー」と呼ばれる人々によって提唱され、世の中に広まっていきます。

勝間和代/経営コンサルタント・著述家。著書『会社に人生を預けるな』
堀江貴文/実業家・著述家。著書『好きなことだけで生きていく。』『仕事も人生も娯楽でいい』『僕たちはもう働かなくていい (小学館新書)』
イケダハヤト/プロブロガー 著書『年収150万円で僕らは自由に生きていく』『まだ東京で消耗しているの?環境を変えるだけで人生はうまくいく』
はあちゅう/ブロガー スポンサーを募りタダで世界一周
家入一真/実業家 「起業」「モノづくり」「新しい働き方」「これからの生き方」「引きこもり」などをテーマとした講演多数
西野亮廣/お笑い芸人・絵本作家
中田英寿/元サッカー選手・実業家・旅人
HIKAKIN/YouTuber
まだまだいますね。彼らに共通するのは「好きなことをして生きていく」ことです。
その中でも代表的なのはホリエモンこと時代の寵児、堀江貴文氏でしょう。
遊んでいるように働いたり、働いてるように遊んだり。助け合って、好きなことだけをして生きていく。そんな人が世界中に増えれば、戦争だって起こりにくくなる。そんな時代が、前に見たような人工知能発展の未来とともに、到来するのかもしれない。
引用:好きなことだけで生きていく。|ポプラ新書
そして今や、これらのカリスマ達に影響を受けた人々がインターネットの世界を主戦場に、今までの感覚とは違った仕事を続々と生み出しています。
そこには最近の小学生のなりたい職業ランキングにYouTuberが上位に来るなど、昭和的な労働観では考えられない事態が起きているのです。


今「働きたくない」と嘆いているあなた。こうした人々の姿を見て「こんなとんでもない人たち目指すのムリ」などと勘違いしないでください。
大事なのは彼らのようになろうとすることだけではありません。
今の社会で彼らのような人たちが増えているという現実とその背景に気づいてほしいということです。
人々の意識は時代の変化に遅れてついてくる、ということは先程説明しました。
上で挙げたような変化が起きたのはここ10~15年くらい前辺りから。昭和的な働き方を否定する動きが広まる反面、まだまだ旧来の働き方を良しとする人々は新しいムーブメントを認めようとしませんでした。
ホリエモンがバッシングを受け続けた末に逮捕、投獄されたり、安藤美冬さんや家入一真さんの活動が炎上したり、批判を浴びたりしたこともありました。
確かに「実体がない」「何をしているのかわからない」などと言われ迫害されてきた経緯は理解できなくはありません。
しかし現在ではどうでしょう。
彼らの後に続くフォロワーたちはおびただしい数に上っています。彼らは非常に多種多様に自分のやりたいことを表現するようになりました。
YouTuberのHIKAKINさんも元はスーパーの店員でした。
SNSを利用したセルフブランディングやクラウドファンディングでの資金調達。こうした手段で多くの人が世の中を動かし始めてくると、ちっぽけな一市民に過ぎない自分も身の回りの何かをちょっとでも変えることが出来るんではないか、という機運が高まってきます。
ホリエモンやカツマーのような少数派のカリスマが「昭和的労働観」に立ち向かい壁にぶち当たり続けた時代から、「自分のやりたい事で自由に働く」人々が世の中にあふれ返る時代へと変りつつあります。
まさに「人々の意識が変われば社会にも影響を与える」のです。
でもそれだけで生きていけるの?

藤原麻里菜さん(25)は無駄なものをつくるプロフェッショナルである。
YouTubeの藤原さんのページ「無駄づくり / MUDA-ZUKURI」には、
「ドキドキしないとLINEが送れないマシーン」
「札束で頬を撫でられるマシーン」
「会社を休む理由を生成するマシーン」
「Twitterで『バーベキュー』と呟かれると藁人形に五寸釘が打ち付けられるマシーン」
など、藤原さんが自ら作った「無駄だけどでもあったらちょっと生活が楽しくなるかもしれないマシーン」がたくさん紹介されている。中でも人気の高かった、歩くたびにサンダルの下の空気入れから胸の風船に空気が送られて、胸が大きくなっていく、
「歩くとおっぱいが大きくなる マシーン」
の動画は150万再生を超えている。チャンネル登録者数は6万人を超える人気のチャンネルだ。
引用:25歳「ムダなモノ」を作って稼ぐ彼女の生き方|東洋経済ONLINE

人は食べなければ生きていけない以上、生活していけるだけの収入は必要です。
そして私たちの暮らしを支える環境も劇的に変わってきています。
シェアハウス、モノを持たない生活(ミニマリスト)、半農半X、といった多様な生活スタイルが紹介され、最近では「アドレスホッパー」なる人々も若者を中心に増えているそうです。
こうしたモノの所有に執着しない生き方に加え、格安スマホやSIMフリー、フリーWi-Fiなどでの通信費の低下により、私たちの生活コストは劇的に安くなりました。
もちろんぜいたくな暮らしだとか、私たちの親世代のような安定した暮らしは望めないかもしれません。それでもこれからの時代を生きる私たちにとって、単に物質的に豊かである、安定していることは必ずしも絶対的な価値ではないと言えるでしょう。
自分独自の価値を求めて好きな事でお金を稼ぎ、足りない分はバイトや複数の仕事で生活を支える。それが普通の生き方になる時代はすぐそこまで来ているのかもしれません。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
今現在「働きたくない」と思っている人たちは、働くことによって自分が何を失うことを恐れているのか、よく考えてみてください。
ただ誤解していただきたくないのは、サラリーマンとして会社や職場に勤める働き方が絶対悪ではありませんし、そうした仕事は今後も日本経済の屋台骨として機能していくでしょう。
「時間」「場所」「価値」「意味」「繋がり」…あなたが、会社という組織に所属することでこれらを犠牲にすると考えるのなら、視点を変えてみてください。
今の会社で自分のやりたい事を実現するために働くのも素晴らしいことですし、農業や漁業といった第一次産業で生活の根本基盤を支えることに生きがいを見出すのも大事なことです。
「働く」という概念から一度自由になってみて、「自分は何をして生きていきたいか」を考えてみましょう。
今の社会は、昭和的労働観とそれを否定し新しい生き方を実践する令和的労働観の移行時期と言えるでしょう。その両者がせめぎ合い、その只中で翻弄された多くの人が「働きたくない」というアレルギー反応を示した時代。それが平成の30年間だったのかもしれません。


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