G20サミットが大阪で開催!主要20カ国の転職事情を調べてみた

2019年6月28日から29日にかけて、大阪でG20サミットが開催されました。

G20が日本で開かれるのは初めてということもあり、国内は、特に大阪はざわついていたかもしれません。各国の要人が日本に来ますから、テロ対策や警備などは大変だったんじゃないかなあ、なんて感想はあんまり他人事すぎるでしょうか。

とはいえ、例えば列車の運行はこんな風にいつもとは変わりましたし、コインロッカーが封鎖されたり、果てはホテルのトイレのゴミ箱まで撤去されたりしたそうです。いやはや、国際会議の緊張感というのは、半端ではないんですね。

さて、今回はそんなG20に関しても、転職の話題をメインにしてお話しようと思います。

ゆかり
え、なんだか堅そうな話題ね…。

木佐貫
そうかな? じゃあなるべくフランクな感じで喋っていこうか。

確かに、G20サミットと転職、なんていう言葉を並べてしまうと少し、かたい印象を持ってしまうかもしれませんね。ただ、今回の話題はそんなに堅苦しいものではありません。

今回の話題はこちら

  • G20ってそもそも何?
  • 参加国はどんな国?
  • 参加国の転職事情とは

 

では、ここまで喋っておいてなんですが、「そもそもG20って何?」ということからざっと説明していきたいと思います。

 

G20とは

G20の「G」って?そもそもG20の意味とは

G20は「Group of twenty」の略です。Groupの頭文字を取って、「G20」と略すようになりました。

Groupは単に「グループ」というのではなく、weblio英和辞書によれば「(主義・趣味などを同じくする人の)集団」という意味になるようです。これを合わせてみると、「20の主義や目的を同じくする国々の集まり」と考えられますね。

では、「主義や目的」を同じくすると言っていますが、これは一体何でしょう。これの答えは、G20の正式名称を見ると明らかになります。

G20の正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」です。世界のGDPの8割以上を占める「国際経済協調の第一のフォーラム」として、G20は世界経済を力強く成長させていくことを目的としてきました。

(引用:G20大阪サミット2019

G20で集まる20の国々は、「世界経済の成長」という目的を同じくしているということになりそうですね。

実はここ最近では、G20では経済だけでなくて、たくさんの話題について語ろうとしています。とはいえ、「経済」についての話題をメインに、各国が語っていく会議がG20サミットと言えるでしょう。

G20の参加国

既に述べてはいますが、G20には20の国々が参加します。しかし、全てが国ではありません。この会議は、19の国と1つの組織(EU)の組み合わせで構成されています。NHKは、この会議をG7(主要国首脳会議)と区別して、「先進国に新興国を加えた主要20か国」と呼んでいるようです(参考:Wikipedia)。

組織を含んだ20の国々をただ並べても見づらいので、NHKの表現を参考に、ここでも参加国をまとめてみようと思います。

G7参加国

・アメリカ ・イギリス ・イタリア ・カナダ

・ドイツ ・日本 ・フランス

新興国11ヵ国

・アルゼンチン ・インド ・インドネシア ・オーストラリア ・韓国

・サウジアラビア ・中国 ・トルコ ・ブラジル ・南アフリカ ・メキシコ

その他

・ロシア ・EU

つまり、G20の参加国は、G7参加国+新興国11ヵ国+ロシア+EU ということになります。

ゆかり
構成はわかったわ。だけど、なんでこの国々が会議をするのかしら。
木佐貫
ああ、その答えはとってもシンプルでね。この国々はとにかく、経済的に強いんだ。

これらの国々のGDP(国内総生産)を合計すると、なんと全世界のGDPの80%を超えます

世界経済の成長について議論する会議ですから、GDP上位層が集まるというのは納得ですね。各国のGDP世界ランクなどについては、後でまた詳しく書いていくので、ここではひとまずG20の説明を続けていきます。

この会議を大阪でやる意味とは

ゆかり
え、「日本でやる意味ある?」っていう挑戦?
木佐貫
違う違う、なんでそんな喧嘩腰なの。

「大阪でやってもしょうがないじゃん」ということを考えるわけではありません。

実は、このG20を開催する国は、その会議の「議長国」となるのです。G20において日本が議長国となったことは、過去一度もありません。つまり、今年2019年の会議で、日本は初めて議長を担ったのです。もう過ぎてしまったこととはいえ、何だかわくわくしてしまいますね。

木佐貫
さて、G20の議長国についてまで話したところで、次はG20参加国それぞれについて、もう少し見ていくことにしましょう。

 

G20参加国それぞれの特徴・転職事情

先ほども少し話しましたが、G20はいわゆる経済大国(成長中の国々も含めて)の集まりです。

ゆかり
そう言われると、どんな国なのか気になるわね。
木佐貫
話しがいのあることを言ってくれるね。ありがとう。

どんな国なのか、国の基本データと一緒に、経済状況を見ていくことにしましょう。また、経済が成長している国ならば、その国の労働状況についても気になります。経済を回すのは経営者・労働者といった人たちですから、長く働く人が多いのか、はたまた転職する人が多いのかなどが、少し気になるところです。

では、参加国の名前を紹介した時に使った分類を使ってお話していきます。

G7参加国(先進国7ヵ国)

アメリカ

基本データ
【面積】約963万平方km 【人口】3億人超 【GDP世界ランク】1位 

言わずと知れた経済大国です。GDPの世界ランクは堂々の1位、金額にして20兆ドルを超えています。20兆なんて、もはや想像もつかない額ですね。経済の中心的な都市はニューヨークで、他にもカリフォルニア州のシリコンバレーにはGoogleをはじめとしたIT大企業が並んでいます。

木佐貫
また、アメリカの労働事情は面白くて、「転職回数がとても多い」んです。

アメリカの労働統計局の2017年の調査によると、アメリカの労働者は18歳から50歳にかけて平均11.9の職を経験するそうです。その内の半分くらいにあたる5.5の職は、18歳から24歳という若いうちに経験するそうです。7年間で平均5つ以上の職を転々とする、となると、1つの職に1年以上ついている方が珍しいということになりますね。

下のグラフは、その調査報告で用いられた、18歳から50歳までの労働者が今までついた職の累計を示したものです。18歳から20代いっぱいまでで、職をたくさん探していることが見て取れますね。

(引用:NUMBER OF JOBS, LABOR MARKET EXPERIENCE, AND EARNINGS GROWTH AMONG
AMERICANS AT 50: RESULTS FROM A LONGITUDINAL SURVEY)

とはいえ、35歳を過ぎると落ち着いてくるのか、あまり転職回数は多くないようです。実際、報告書の中でも職業経験数は、35歳から44歳の間では平均2.9、45歳から50歳の間では平均1.7だと述べられています。

また、アメリカの転職はかなりペーパーレス化を推しているようです。日本の「手書きの履歴書じゃないとダメ!」という文化とは正反対で、「手書きの履歴書? この人はパソコンが使えないのか?」と思われる可能性もあるそうです。

さらに、アメリカでの転職活動はビジネス系SNSを重視しているようです。

LinkedInと呼ばれる、ビジネスのつながりを大切にしたSNSを活用しています。リクルーターも頻繁にメッセージを送ったり、求人もたくさんあります。求人サイトもありますが、LinkedInはかなりアメリカのビジネスパーソンにとっては大きな役割を果たしています。

(引用:English Hacker

アメリカで転職活動をしたい、と考えておられるグローバルな感覚をお持ちの方は、ぜひこうしたツールを使ってみるといいかと思います。

さて、最後は何だか宣伝みたいになってしまいましたが、続いてはイギリスについて話していきます。

イギリス

基本データ
【面積】約24.5平方km 【人口】6600万人超 【GDP世界ランク】6位

霧の都ロンドン、なんて言葉がありますよね。個人的にはシャーロックホームズのイメージが強い国です。この国も経済大国と呼ぶにふさわしい国と言えます。GDPは世界6位、金額をドルに直しておくと2兆ドルを超えます。

ゆかり
さっきアメリカが20兆ドルって聞いたから、少なく思えるけど、これだって想像もつかない金額よね。
木佐貫
本当にね。アメリカは圧倒的なんだなあって思わなくはないけど、人口も面積も、つまり働く人の数も場所も全然違うんだよね。
ゆかり
あ、そっか。イギリスの方が断然国土面積は狭いわね。勤勉ってことかしら。
木佐貫
そうだね、イギリスの人は、他のヨーロッパの国々の人より働くとは言われているようだよ。

現在EU離脱でざわついているイギリスですが、まだ離脱していないようなので、他のEU加盟国と比べられますね。イギリスは他のEU加盟国と比べても比較的労働時間が長い方です。国民が勤勉というよりも、国の政治の流れ的に、労働時間が結果的に伸びてきていると考えた方がいいかもしれません。

イギリスの労働状況のこれまで
  • 1979年 保守党政権の規制緩和 ⇒労働者保護(年少者や女性)の規制を緩和
  • 1986年 性差別禁止法 ⇒工場法で決められていた女性の労働時間などの規定撤廃
  • 1989年 雇用法 ⇒年少者の労働時間などの規制撤廃
  • 1993年 労働組合改革・雇用権法 ⇒日曜営業についての規制を撤廃
  • 1994年 日曜営業法 ⇒日曜日の営業禁止を撤廃

(参考:労働政策研究・研修機構(JILPT)調査「労働時間規制に係る諸外国の制度についての調査」)

こんな流れがあったなら、労働時間が長いと言われても納得せざるを得ませんね。

では、こうした状況のイギリスの転職状況はどうなっているのでしょうか。

BBCニュースによると、政府公的機関による調査はあまり内容なのですが、CIPD(イギリス人事教育協会)という会社の調査では、こんなデータが出てきました。

(出典:Employee Outlook Autumn2016

ゆかり
全編英語なの? 読むの面倒くさいな…。
木佐貫
んー、要は「イギリスの労働者のうち、23パーセントの人は新しい職を探している」ってこと。春の調査よりもこの調査の時の方が、転職希望者が多いみたいだね。
ゆかり
へえ。あ、本当だ。新しいスキルを身に着けるとかどうたら、書いてあるね。
木佐貫
めちゃくちゃざっくり読むねぇ。

さて、イギリスもまた、転職に関しては寛容です。

イギリスでは日本のような終身雇用制度というものはありません。最初についた仕事を続けることで日本でいう定年近くまで勤め上げるなんてことは、イギリスではほとんどありません。

(中略)

イギリスでは3年程度を目処に転職することが一般的です。「転職をすることでキャリアアップを図るべき!」という考え方が、イギリスには根付いています。

(引用:セブ島留学マナビジン

3年がひとつの転職スパンの目安になっているようですね。「一度入職したら3年は働くべき!」なんてことを、私も言われたことはありましたが、これは「それくらいは耐えて、できればその後も同じところで働きなさい」という意味合いを含みますよね。

イギリスの場合は、「3年くらいをめどに様子を見て、スキルを身に着けておいて次の職場に生かしていけばいいんじゃない?」という意味合いが多分に含まれているかもしれません。私はイギリスで就活をしたことがないので、この辺りは想像になってしまいますが。

さて、イギリスの労働事情についてはこの辺りにして、次はイタリアの紹介に移ります。

イタリア

基本データ
【面積】約30万平方km 【人口】6000万人超 【GDP世界ランク】7位
ゆかり
あら、GDPはイギリスの次の順位なのね。
木佐貫
そうだね。イタリアもGDPは2兆ドル超えだよ。

ただ、先程のイギリスにもやや関係があるのですが、この2国のGDPは、「地下経済」によってかさ上げされているといいます。

ゆかり
地下経済?
木佐貫
うん。いわゆる「売春」とか「麻薬売買」とかのことだよ。
ゆかり
うーん、それって倫理的にどうなの?

そこのところはちょっと気になりますよね。違法行為によって出た利益を、公的な情報の中に計上していいのかは疑問です。

ただし、これを計上するとまっすぐに発表したイギリスとイタリアよりも先に、オランダは売春(合法のものに限る)を計上していたようですし、他の国も地下経済の利益を計上できる場合どうなるか、という算出はしているようです。

欧州連合(EU)が、加盟国のGDPの算出基準を今年9月から均一化するのに伴う措置で、すでに一部合法の売春を統計に加えているオランダなどとの不公平をなくすのが狙いだ。EU統計局のユーロスタットによると、均一化でEU全体のGDPは2.4%もかさ上げされるという。

(引用:産経ニュース

そして、恐ろしいことに先進国の地下経済は規模が大きく、日本ももし地下経済(産経ニュースの記事内では「やくざ経済」と言われる)の利益をGDPに加算できるとしたら、GDPの額は大きく変動するといわれています。

木佐貫
個人的な倫理をもとにすると、気持ち悪いなあと思ってしまいますが、国家的なGDPの目標達成には、これももしかしたら、必要なのかもしれないですね。恐ろしい話ですが。

さて、地下経済とGDPの話はこの辺りで止めておきましょう。ややきな臭い印象を持たれてしまったかもしれませんが、イタリアの労働事情についてです。

そもそもイタリアは現在不景気で、失業率は2019年2月の時点で10.7%です。15歳から24歳の若者の失業率に至っては、40%を超えています。

ゆかり
え、それでGDP世界7位なの? もうよくわからないわね…。
木佐貫
そこで地下経済の影響が大きいのではないかと考えてしまうから、なかなか闇が深そうだけれどね。ただ、国民が生活できるならそれに越したことはないんだよね。
ゆかり
そうねぇ。じゃあ、イタリアもまた、労働者が頑張ってるのかしら。

労働時間としては、イギリスより少ない印象を持ちますが、EU全体で見ると平均的な感じがあります。

また、イギリスは転職に寛容でしたが、イタリアも同様に寛容なんでしょうか。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「国際比較でみる日本の非典型雇用 雇用流動化のなかの非柔軟な構造」)

木佐貫
うーん、これだと寛容かどうかはよくわからないですね。

ただ、このデータを見ると、現在正規職員として働く人が転職を経験している・あるいはしていない割合は、イタリアも日本もそう変わらなさそうです。しかし、次のデータはどうでしょう。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「国際比較でみる日本の非典型雇用 雇用流動化のなかの非柔軟な構造」)

こちらも同じ論文に見られたデータです。比較すると、「正規職員になるために転職する」というのは2国間であまり変わらないと考えられるものの、もう少し広く「非正規職員」も含めた場合、その転職の回数」には違いがありそうです。(イタリアの場合は「週35時間以上」を正規、「週35時間未満」を非正規、と考えたら大丈夫です)

日本よりも正規職員になるまでの転職回数が多い、という風に読みとれます。とすると、「転職に寛容ながらも、実際に正規の手堅い職に就くのは難しい」状況があるように考えられますね。

やはり、景気が下り坂の国は、やや仕事探しが難しいのでしょうか。そんな思いを抱えながらも、次はカナダの様子を見ていくことにしましょう。

カナダ

基本データ
【面積】約998万平方km 【人口】3725万人 【GDP世界ランク】9位

ものすごく主観的な言い方ですが、なんだかバランスが良さそうな雰囲気のあるデータですね。カナダ経済はここ数年低迷していたようですが、2019年はそれが回復傾向に向かう見通しのようです。

カナダ銀行(中銀)のリン・パターソン副総裁は7日、個人消費や設備投資がさえず、カナダ経済は当初想定より長い「遠回り」が続きそうだが、2019年下期には経済成長率が回復すると述べた。

(引用:Newsweek ニューズウィーク日本版

木佐貫
不景気からの回復なんてニュースを聞くと、外国のことでも少し嬉しくなってきますね。

さて、そんなちょっと上向き加減のカナダ、労働・転職事情はどうなっているんでしょうか。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「国際比較でみる日本の非典型雇用 雇用流動化のなかの非柔軟な構造」)

実はさっきのイタリアの方でも同じ資料を使ったのですが、カナダは正規雇用者のうち、男女とも46パーセント以上の人が3回以上の転職を経験しています。ここから考えるに、カナダにもまた、これまで見てきた諸国と同じように、転職をタブー視する文化は無さそうです。

Within the Canadian workforce, the prevalence of those who are looking for a new job even though they are already employed has increased in recent decades. In 2014, 12% of salaried workers in Canada reported that they were looking for a new job, compared with 5% in the mid-1990s. This upward trend may be the result of lower job search costs resulting from the rapid emergence of information and communication technologies (e.g., websites, social media, mobile devices) during this period.

(引用:Statistics Canada

ちょうどいい日本語の資料が見つからなかったので英語になってしまいましたが、カナダでもまた、転職希望者の割合は上昇傾向にあるようです。少しデータとしては古いですが、2014年には1990年代半ばと比べて新しく職を探す人が増えたとのこと。職探しにかかるコストが減少したことがその一因ではないか、とのことでした。

同研究の中では、「仕事の満足度と新たな職探しには強い関係がある」という当たり前のことも統計的に説明されていました。現状の仕事に満足していない場合、たとえば職場環境が悪かったり、給料が悪かったりした場合には、満足度が低いわけですから新しい職を探していきますよね。

カナダにおける転職活動・就職活動についてですが、TROJAによると、経験及び学歴重視で進んでいくようです。日本ほど顕著ではないにしても、学歴があるに越したことはないようですね。

木佐貫
しかもこの記事によると、「学士」を募集していたところに「博士」が来ると、「あなたはちょっとすごすぎ」ということで弾かれることもあるようです。
ゆかり
な、なんか理不尽ね。
木佐貫
確かにそうかもね。でも、身の丈に合った職探しはできそうだよね。

さて、カナダの転職事情に関してはこんなところにして、G7参加国については残り3ヵ国になりました。次はドイツを見ていきます。

ドイツ

基本データ
【面積】約35.7平方km 【人口】8300万人 【GDP世界ランク】4位
ゆかり
4位! へえ、ドイツってビールとソーセージのイメージが強いけど、そういう産業が経済を支えているのかしら。
木佐貫
いや、ドイツの経済を大部分支えているのは工業だよ。自動車産業とか、エネルギー系も強いな。
ゆかり
あ、そうなの? でもそっか、ベンツとかはドイツ車だったわね。
木佐貫
高級車だし、そりゃあ経済を回す産業になるよね。

世界有数の工業国として名をはせるドイツですが、この国の労働・転職事情についても、また見ていくことにしましょう。

ドイツの労働事情を見るにあたって無視できないのは、教育制度です。どんな教育の流れになっているか、下に図を引用しました。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「ドイツにおける職業別労働市場への参入」)

ゆかり
ちょっと変わった図ね。「オリエンテーリング段階」って何かしら。
木佐貫
いいところに気付いたね。そこがこの教育制度のポイントなんだ。ドイツの子供は、10歳までに「自分の将来行きたい方向」を決めるんだよ。

そう、ドイツの教育制度の最大の特徴の一つは、10歳までに12歳からの自分の人生の歩みを決めることです。ドイツは巷で「職業社会」と言われるだけあって、こんな所からとてもシビアです。10歳までにフラットな教育を大体受け終えて、そこからは職業別に学校を選んでいきます。

高等教育段階、つまり大学なども「職業専門学校」という感じが強いようです。大学のブランド(大学の認知度など)ではなく、その大学にある専攻が、自分の職に関わってくるというわけですね。

そして、こうした職業社会であることを考えると、ドイツは基本的に転職は一般的ではありません

(…略…)若いときと中高年の 「職業」 が異なることが多数となっているのか, それとも若いときに決めた 「職業」 をそのまま背負って生きることが多数なのかという点である。 これについてはやや古いが 1998/99 年の調査が利用できる27)。図 7 である。 これによれば, 多くの人々は, 自分の職業を一度も変えていないと判断している。 被用者ではちょうど 3 分の 2 (66%) がそう考えており, 自営業者もほぼ 6 割 (59%) がそう考えている。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「ドイツにおける職業別労働市場への参入」)

ちなみに図7はこちら。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「ドイツにおける職業別労働市場への参入」)

こうした「自分の職業」に対する国民の意識が、幼いころから明確になっている国では、転職といってもいまいちピンと来ないのかもしれませんね。転職しよう、と意気込む日本人などにとっては、やや閉塞的に思うかもしれません。

さて、G7参加国残り2ヵ国ですが、50音順に並べてしまいましたので、先に日本から喋っていくことにしましょう。大トリはフランスです。

日本

基本データ
【面積】約37.8平方km 【人口】1億2000万人超 【GDP世界ランク】3位
木佐貫
さあやって参りました、わが国のターン。
ゆかり
いきなり解説員風に喋り出したね?
木佐貫
そろそろこの辺でハメ外しておかないと、残り14の国を喋るのに持たないなって…。
ゆかり
もう少し頑張っていこうよ、G7に限ればあと1つでしょ。
木佐貫
うん。じゃあ、頑張って喋っていこうか。

日本についてはもしかしたら割愛してもいいかもしれないのですが、せっかくなので軽く話していきましょう。

日本国内の完全失業率は、2018年の調査によると2.4%です。前年から比較すると0.1ポイント低下しているので、状況はやや良くなっていると言えるでしょう。また、この失業率は全国平均ということですが、ひとまず国内すべての地域で、完全失業率は低下しています。

(引用:総務省統計局「労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の概要」)

また、日本国内での転職は、最近では割合寛容になってきたような気がします。「せっかく入った会社なんだから3年は頑張りなよ!」という人は、まだいることにはいますが少なくなりました。余談ですが、私の友人は「入職3ヵ月目だけどこの1年で辞める見切りをつけた」と人に話した際、「逆に3ヵ月よく頑張ったよ」と言われたそうです。うーん、コメントのしにくい会話ですね。

また、この寛容さを裏付けられるようなデータがBLOGOSのニュースで紹介されていました。以下に記事の内容を引用します。

20代・30代の若手を対象に、自分の親は転職をどう感じていると思うかを聞くと、70.8%が「賛成すると思う」と答えた。一方、50代・60代の親世代に、子供の転職をどう思うか聞くと64.3%が「賛成」と答えている。この結果からも、幅広い世代で転職に対してポジティブなイメージを抱いている事がうかがえる。

(引用:BLOGOS

幅広い世代で、転職はおおむねポジティブに受け止められてきていることがわかりますね。

ただ、外国人向けの転職支援サイト(日本での就労を支援している)を見ると、こんなことが書かれていることもあり、顔を覆います。

日本の通常の労働時間は平日の午前9時から午後5時ですが、始業時間よりも早く出勤する(中には1時間も早く出勤する人もいます)、就業時間を過ぎても職場に残って仕事をするといった習慣は、会社や同僚への敬意を示すものとされています。

(引用:Morgan Mckinley Japan

ゆかり
敬意なんてきれいなものじゃなくて、上司が帰らないから部下が帰れないだけじゃないかしら。多分単なる悪癖よ。
木佐貫
超正論だね、ありがとう。けど、こういうことをまだ書かれてしまうくらい、日本の残業文化・滅私奉公精神っていうのは根強いってことでもあるよね。

最近では「働き方改革」なんてものが叫ばれていますから、残業文化や滅私奉公精神は、減ってきたかもしれません。さらに、ここ最近の日本の転職率は5%程度を推移しているようですから、転職に関しても、あまり珍しくはなくなってきたのかもしれませんね。

ゆかり
5%って聞くと少なく聞こえるけど、20人いたら1人は転職するってことだものね。

さて、本当に軽くしか話していませんでしたが、次はG7参加国の中ではトリになります。フランスについてお話していきましょう。

フランス

基本データ
【面積】約55万平方km 【人口】約6300万人 【GDP世界ランク】6位
ゆかり
あら、イギリスもGDP世界6位じゃなかった?
木佐貫
同率ってことかな。じゃあ、フランスもイギリスに並ぶ経済大国ってことだね。
ゆかり
世界経済を語るG20に参加する国だものね。

さて、ではフランスはどんな国なのかについてです。

フランスは農業大国として知られています。

農地面積は国土全体の52.5%を占め(日本同12%)、EU最大の農地面積を有する。穀物生産量では、中国、アメリカ、インド、ブラジル、ロシア、インドネシアに次ぐ世界第7位。ほとんどの農産物において世界上位10位以内の生産量を誇る。主要農産物は穀物では小麦、大麦、とうもろこし、根菜ではばれいしょ、てんさい、畜産では牛肉、豚肉、生乳、チーズの生産が際立つ。また、ぶどうの生産も盛んでワインの生産量は世界第1位である。ちなみに、一人1日当たりの供給熱量で計算したカロリーベースでの食料自給率は、日本の39%に対して129%に達している。

(引用:株式会社クボタ GLOBAL INDEX

実はこのリンク先では、フランスのGDPが世界第5位になっているのですが、恐らく調査の年代が違うためだと思われます。ひとまず5位や6位周辺だと思っていただければと思います。

さて、こうした農業大国のフランスですが、このリンク先でも先に述べられているように、フランスは観光大国でもあります。観光業と農業という二足の草鞋で、経済を回していると考えられそうです。

では、このフランスについても、労働・転職事情を見ていきましょう。

フランス語の資料は残念ながら読めないので割愛しましたが、TABIZINEというサイトによると、フランスは転職をするのが当たり前の風潮があるようです。その理由としては、昇給率が低いことがまず挙げられます。

フランスにおける2018年の昇給率の平均は1パーセントから5パーセントと予想されおり、実際、長く同じ会社に勤めても、劇的な昇給はないことがほとんど。基本的にフランスでは昇給に希望は持てないのです。

(引用:TABIZINE~人生に旅心を~

キャリアアップ、ひいては年収アップのために転職をする人が多いようです。同記事によれば、転職した場合の昇給率は10パーセントを超えることもあるとか。

また、フランスは経験重視で人を採用するという情報もあります。

フランスの労働市場や企業人事の基本概念は職業(métier)とポストである。日本のような学卒者の一括採用はなく,空席のあるポストに,適宜,その仕事をこなす職業資格・能力や経験を持つ労働者を採用する。

(引用:労働政策研究・研修機構(JILPT)「フランスの労働事情」)

新卒採用にあまり期待を掛けていないということは、新卒者にとっては厳しい状況であるということですが、何かしら職に就いて、経験・スキルを持っている転職者にとってはやや動きやすい環境であると言えますね。

さて、G7参加国についてはこんな感じでまとめることができました。最後はやや駆け足でしたが、こんな感じで残りの国も見ていくことになります。

7か国見てきましたが、これらの国々の転職事情をとっっってもざっくりまとめてみると、こんな感じになります。

転職に対して

【かなり寛容】アメリカ・フランス・イギリス・イタリア

【寛容】カナダ・日本(実はアジアの中で、日本は転職に結構寛容なんですよ!)

【寛容ではない】ドイツ

新興国11ヵ国

木佐貫
ここから先はちょっと国が多いので、基本データをはしょりつつ、労働状況を見ていくことにします。

アルゼンチン

アルゼンチンのGDP世界ランクは、2013年の時点で21位です。数字だけ聞くと、中堅という感じがしますが、実は国内の景気はいい方向で安定してはいません。

アルゼンチンの2018年の実質経済成長率は2.5%のマイナスと、景気低迷が長引いている。インフレ率が約50%と高止まりする中、アルゼンチン国民がペソを信用せず、ドルに替える動きは止まっていない。

(引用:日本経済新聞

こうしたアルゼンチン国内の転職事情についてですが、1980~1990年代に生まれた「ミレニアル世代」あるいは「ジェネレーションY」と呼ばれる人々と、それ以前の人々とでは労働や転職への考え方が異なるようです。

「ミレニアル世代」と呼ばれる人々は、それ以前の世代の人々に比べ、非常に転職に対して寛容です。

彼らは、マンネリ化や長期の目標を立てることを苦手とし、将来性を見出せず「行き詰った」と感じたら、すぐさま新しい職場を求め、天職や理想の職場に出会えるまで転職を繰り返す。

(引用:ブエノスアイレススタイル

こうした人々の平均転職回数は、同研究によると7回だそうです。アメリカの調査で見た、18歳から50歳までの経験職数11回超に引けを取らないほどの回数ですね。

インド

インドのGDP世界ランクは10位。ランクとしては高いのですが、何しろこの国は人口が13億人と膨大なので、一人当たりのGDPは世界水準の20%以下とかなり低くなってしまいます。

しかし、インドの経済成長は目を瞠るものがあります。

2018年〜19年のインドの経済成長率は7.3%。JBIC(国際協力銀行)が発表した調査では、中期的有望事業展開国ランキングで中国を抑え1位にランクイン。2018年の時点で世界第7位の経済規模を誇るほどまでにインド経済は成長しています。

(引用:Digima~出島~

実はインドは、2018年~2019年の期間のみならず、その前からも7%超えの経済成長率を維持しているんです。これは実はすごいことで、この状況が続いたら、現在有望事業展開国として中国を抜いている状況(=将来有望な経済状況の国として、中国よりも優れていると思われている状況)から、実際の経済状況で中国を抜く可能性もあるのです。

では、この経済成長著しいインドの転職事情はどんなものなのでしょうか。

(引用:JETRO「スタッフとトップマネジメントの離職率が上昇-第11回賃金実態調査(2)-」)

職位別の離職率を見ていくと、エンジニア・ワーカーの離職率は割合減っていますが、トップマネジメントの離職率がかなり上がっていますね。ただ、全体的にやや離職率は上がっているとも捉えられ、この状況をどうにかするために、インドの企業は昇給などの報酬に価値を置くようにしているようです。

インドでは短期間(1~2年)で転職するのは当たり前という風潮があるようで、こちらも他の先進国などと同様、天職には寛容です。ただし、みんなの海外取引ブログというサイトによると、転職するにあたり、引継ぎという概念がないため、転職された側の人間は後始末が大変なようです。

インドネシア

インドネシアはASEAN諸国の中で唯一のイスラム国家です。20年ほど前、つまり1990年代までは独裁政権下にありましたが、現在は民主化が進んでいる国です。インドネシアは経済成長率が安定していて、経済の主力を「資源」が担っています。GDP世界ランクは16位、インドよりは低めのランクですが、人口を考えると国民一人当たりのGDPは高めです。

インドネシアは、ASEANの中でも資源大国と言われています。輸出の多くは、資源に頼っており、2011~2012年・2013年~2016年では、経済成長率が6%前後から5%前後に推移しています。これは、天然ガスや原油といった資源の価格が要因の一つとなっています。

(引用:Digima~出島~

ゆかり
経済が資源に依存しているってことかしら? だとしたら少し心配ね。
木佐貫
そうだね。だけれど、今のところ資源の価格帯は安定しているようだし、インドネシアの通貨(ルピア)のレートも結構安定しているようだよ。

そんなやや安定状態にあるインドネシアは、リクルートワークス研究所の「ASEAN4カ国の職場実態に関する調査」によると、離職率はやや低めです。勤続年数は1年以上となることが多く、ASEAN諸国の中でも比較的一つの職が長続きする方だと考えていいかもしれません。

インドネシアのオフィス系部署では、平均勤続年数「10~15年未満」が2割近くを占めるのに対し、現場系部署では「2~3年未満」が4割以上と、オフィス系部署より現場系部署の方が、平均勤続年数が短い様子がうかがえる

(引用:リクルートワークス研究所「ASEAN4カ国の職場実態に関する調査」)

木佐貫
ひとつの職への定着率が高いのは、その労働環境がいいことのしるしにもなりますが、新興国の経済の動きとしては珍しいかもしれませんね。多くの新興国は、職を変えるサイクルが早いのが特徴的だと言われていますから、インドネシアはこの点で、新興国をリードするような存在といえそうです。

また、「現場系部署」に分類される仕事は比較的短いスパンでの転職が珍しくないので、インドネシアは「転職」という行為自体をマイナスに捉える国ではないと考えられます。ちなみに、離職率を下げるためにインドネシアでは、給与の前払いシステムを導入しているそうです。なかなかユニークですよね。

オーストラリア

そもそも世界経済が2019年現在伸び悩んでいることもあり、オーストラリアの経済もやや低迷気味です。とはいえ、オーストラリア政府は2019年度には2018年に比べて景気が上昇する見通しを立てています。

また、オーストラリアも転職に対しては割合ポジティブな国です。

日本では転職の回数が多いと嫌な顔をされることが多いですが、オーストラリアは逆。

多くの経験があることを評価してくれます。経験とそれ相応の技術があれば、契約社員などでもそれ相応の給料がもらえます。

(引用:せかいじゅうライフ

こんな風に、「転職=長続きしない」イメージではなく、「転職=経験を得ている」イメージを持ってくれるのがオーストラリアのようです。

また、雇用労働事情という研究によると、好条件を求めて、あるいは現在の労働条件への不満を理由に2年以内に転職する人の割合は高いようでした。

韓国

次は日本のお隣の国、韓国のターンです。

韓国全体の経済をみると、経済成長的に実はやや失速気味です。2019年1~3月期の実質GDP成長率はマイナス0.4%でした。大きい原因としては、世界的な貿易取引の縮小が挙げられるでしょう。韓国の輸出もその影響を受けて、経済成長にストップがかかっている(むしろマイナス成長になっている)ようです。

また、この国は若者の離職率が高いようで、hankyoreh japanによれば、就職経験のある若者の62.2%は1年2ヵ月ほどで仕事を辞めてしまうといいます。

ただ、企業の規模の幅があまり広いと言えず、「就職する」というゴールに行きつくことが難しいようです。

韓国にはサムソン、現代、LGなど財閥系の大企業もありますが、日本に比べて圧倒的に中小企業が少ないので、大企業に入れなかった人の受け皿が少ないことが「就職できない」という状況に繋がります。

(引用:みんなが知りたい韓国文化

こうした就職難の状況で離職するというのはなかなかリスクが高いような気もします。さらに、韓国の若者、学生たちは就職するために、勉学も合わせてインターンシップや資格などの準備を随分とするようですから、そうまでして頑張って手に入れた職を手放すのには、それまでにどんな大変な思いをしたのか、痛ましいような気もしてしまいます。

就職がそんなふうに難しいものである以上、転職も実績重視になってきます。韓国では、ぽんぽん気軽に転職できるというわけではなさそうですね。

サウジアラビア

サウジアラビアは比較的好景気でいるようです。サウジアラビアの経済の主力は原油ですから、原油高の今、景気が良い状態であるというのは頷けますね。貿易収支も輸出額が輸入額を900億ドル近く上回っているので、安定した黒字経済です。

こうした安定した経済状況であるサウジアラビアは、しかし若者の離職率の高さが社会問題化しているといいます。そもそも失業率は10%前後と高く、さらには若年層の失業率は40%ほどまで高まります。

また、サウジアラビア人はいわゆる「ブルーカラー」といわれる職を嫌う傾向にあるようで、公務員(ホワイトカラー)志向が強いようです。とはいえ国全体で教育水準は低いため、大企業などへの就職は厳しい状況にあると考えられます。

離職率の詳しいデータを見つけることができなかったのが残念ですが、サウジアラビアに進出している日系企業に対するJETROの調査によると、現地での経営に際しても人員の離職率の高さは問題になるようでした。

経営の現地化の課題(N=32)については、「現地人材の能力・意識」と回答した企業が78.1%と最も多かった。次いで、「幹部候補人材の採用難」(50.0%)、「現地人材の育成が進まない(43.8%)、「幹部候補人材の離職率の高さ」(34.4%)が続いた。

(引用:JETRO「在サウジアラビア進出日系企業実態調査(2014年度調査)」)

転職についてポジティブなイメージがあるのか否かというデータは見受けられませんでしたが、良い企業に対する就職が教育水準的な面でやや困難であるということを考えると、離職したとしても、再就職をするのは厳しいかもしれません。

中国

中国経済は、色んな意味で今は世界が注目しているように思います。驚異的な成長を遂げてきた中国経済に、アメリカがやや攻撃を仕掛けたような感じがあります。米中貿易摩擦、という言い方が一般的だったと思いますが、ハフポストは「米中貿易戦争」なんていう言い方さえしています。

不安定に思える中国経済ではありますが、その中で働く人々の労働事情はどうなのでしょうか。

木佐貫
どうも、中国のIT企業に関して言えば、平均勤続年数は長いところでも4年のようです。

ちょっとジャンルが狭いですが、中国経済を引っ張っているのは第二次産業(自動車や電子機器)と題三次産業(サービス業)で、IT企業は経済と関わりが深いと言えるため取り上げました。

もともと中国人は転職をためらわない気質だそうで、やや情報が古いですが、2015年の平均離職率は17.7%です。このデータ元には離職の理由は特に書かれていませんが、MAG2NEWSによると、少なくとも日系企業へ就職している人の場合は、給与の問題や言語の問題などが大きな理由になりそうです。

トルコ

トルコ経済は、実はちょっと不景気だったのですが、最近は持ち直しはじめているといいます。Bloombergの記事によれば、トルコ通貨「リラ」次第ではあるものの、経済成長はプラスの方向に進むだろうとのことでした。

そんなトルコでは、転職は若いうちに行われることが多いようです。

ジョブホッピング(転職)も、特に若いうちはよく見られるが、30歳代後半ぐらいから徐々に定着していく。このため、経験を積んだマネジャークラスの人材が労働市場において不足しがちである。

(引用:JBIC 国際協力銀行「トルコの投資事情」)

よく見られる、と軽く書かれるあたりをふまえると、そこまで転職にマイナスイメージを持たれているわけではなさそうですね。

ブラジル

ブラジルも、転職に対してあまり抵抗がない国のようで、「雇用労働事情」という調査によると、以下のような結果になっています。

ブラジルでは通常、離職の大部分は非自発的離職であり、例えば、2006年労働市場の公的部門における900万人以上の離職者のうち、80%は非自発的離職者であった。

(引用:雇用労働事情 ※太字は記事作成者による)

ブラジルは大和投資信託の調査によると、2013年から2016年にかけて不景気だったようですが、2019年は2%の経済成長の予測が立てられていて、景気の状況としては安定しています。安定した経済状況のもとでは、転職活動もしやすいでしょうから、労働力がスピーディーに流れていくような状況が続くのかもしれませんね。

南アフリカ

日本人の耳にはあまりなじみのない国名かもしれませんが、南アフリカもG20の参加国です。アフリカの国としては唯一の参加国ですね。南アフリカ経済は資源の輸出が主力ですが、最近では若干低迷気味です。とはいえマイナス成長とまではいっておらず、妙にという言い方も変ですが、妙に安定した経済状況をしていると言えます。

南アフリカの労働状況における問題の一つは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートによると、黒人の失業率の高さが挙げられます。南アフリカの人口の大半は黒人ですから、その失業率が高いということは、国民の失業率が高いということにもなりますね。

ただ、こちらもまた「雇用労働事情」という調査によると以下のような情報がありました。

南アでは技術者の需要が多く売り手市場である。しかし上記で見てきたように、需要が多い高レベルの技術者は僅少であるので、技術者は高い給与を要求する事が出来るが、一方、雇用者にとっては、技術者が見つからない場合でも、均等法により、見つける範囲が限られてしまう。したがって、転職も多く、技術者グループには、転職常習者 (serial job hoppers) と言う言葉が存在する。

(引用:雇用労働事情

均等法というのは、黒人と白人の雇用の割合をならす、という趣旨の法律です。だから、黒人の多い南アフリカに置いて、黒人の労働者は売り手市場になるわけですね。だからこそ新天地を求めて転職も多く行われるようです。

とすれば、転職へのイメージは特に悪くなさそうですね。

メキシコ

木佐貫
さて、ようやく新興国11ヵ国のうち最後の国、メキシコです。ここまでよく頑張って読んでくださいました。ここからは、あとロシアとEUがありますが、同じテンションで行かせていただきますね。

JETROの調査によると、メキシコは治安の悪さと離職率の高さが問題視されているようです。また、キマタパーソネルの社長・木全健一氏によると、メキシコには離職率が7割に上る企業もあるそうですから、転職・離職に対して「当たり前」という感覚を国民が持っているような印象があります。よい・悪いといったイメージを持つ以前の問題かもしれませんね。

やや不穏な情報を並べてしまいましたが、基本的にメキシコの経済は安定しています。経常収支は赤字が続いているものの、赤字自体が縮小傾向にありますので、国の財政がただちに破綻する、ということはなさそうです。

主要な貿易相手が世界経済の要を担うアメリカであることも、その安定に一役買っているのかもしれませんが、ともかく今のところは安定した経済状況の中で、メキシコの企業は「労働者の離職率の低下策」を考えている最中です。

さて、ではここまで新興国11ヵ国を見てきました。長かったですね。これらの国々も、G7参加国と同じように転職事情をとってもざっくりまとめてみましょう。こちらは寛容さではなく、「転職のしやすさ」でまとめました。寛容であっても、転職しにくいという状況がある国もあったためです。

転職が

【しやすい】アルゼンチン・インド・中国・トルコ・メキシコ・オーストラリア・ブラジル

【しにくい】韓国・インドネシア(インドネシアはあまり離職率が高くない)・サウジアラビア

【不明】南アフリカ(黒人の売り手市場・失業率の高さから、転職しやすいのか不明)

それでは最後に、その他の2ヵ国(うちひとつは組織ですが)についてお話していきましょう!

その他

ロシア

少し情報が古くなりますが、2015年のリクルートワークス研究所のコラム「個人主義、実力重視を好むロシア人材」によると、ロシアの労働市場は、2014年の景気後退の影響を受けて不安定な状況にあるといいます。このコラムで紹介されているロシアの失業率は2014年時点の5.3%でしたが、2018年12月から2019年2月までの失業率はそれよりも低い4.9%でした。

木佐貫
この数値だけ見ると、ロシアの労働状況はいい方向へと向かっているように思われます。しかし…

しかし、ロシア・ビヨンドというサイトによると、ロシアは以下のような状況にあるようです。

「ロシアの企業は“解雇する”のに苦労しています」とトラフキン氏は説明する。「雇用保護法があり、雇用主が従業員を予告なしに解雇することを認められていません。でも、賃金カットはできます」。だから、雇用主は必要とあらばそれを実行するのだ。

(引用:ロシア・ビヨンド

給料が低くなっても、解雇されることがないので、労働者は働き続け、失業率は上がらないという仕組みのようです。というのも、失業手当がロシアにもあるのですが、それでは生活できないという事情があるからです。

また、先程紹介したコラム「個人主義・実力重視を好むロシア人材」では、ロシア国内の転職事情は以下のようにまとめられてます。

転職者は全般に少ないものの、過去数年は増えており、モスクワやサンクトペテルブルクなど大都市に人気が集中している。ロシアでは、マネジャー以上の管理職や高度な技術を有する専門家の転職はあまり一般的でなく、新卒や大量採用で就職した人の方が頻繁に転職する。経済情勢の悪化により、現在勤務する会社で働きながら、転職のオファーを待つ従業員が多い。

(引用:リクルートワークス研究所「個人主義・実力重視を好むロシア人材」)

転職に対してのイメージが良いのか悪いのかはよくわかりませんが、あまり転職は一般的ではなく、するとしても大都市への転職という形が好まれる、ということですね。

EU

いよいよ20ヵ国の労働事情については最後になりました。EUは「ヨーロッパ連合」という組織であり、国ではありませんが、1つの地域としてまとめてG20に参加しています。

この組織には実はG7参加国であるイタリアやイギリス、フランスなども加盟しているのですが、G7参加国は、EUとしてまとめてではなく、独立した国として参加しているようですね。ちょっと不思議な感覚がします。

さて、そうした組織であるEUは、全体として失業率などのデータを公開しています。2019年2月の段階で、EUの失業率は6.5%。先程のロシアと比べるとやや高めですね。とはいえ、EUは28の国が加盟する連合ですから、それらのデータを集めて出された数値がこれだとすれば、低いと言ってもいいのかもしれません。

EU加盟国全体において、人々は労働と自分の生活のバランス、いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」には比較的満足していると言います。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、長時間労働(無給の労働も含む)が存在したり、給与が低かったりという問題がところどころで見られながらも、全体としては労働状況に関して満足とする人が多いとのことでした。

この地域内での転職がどんなものなのかについては、資料が上手く見当たらなかったため、細かいところは不明です。しかし、既に述べてきたイギリスやフランスの転職事情を見るに、比較的転職はしやすい状況にあり、「より自分にとって好ましい労働条件」を探しやすいのではないかと思われます。

 

まとめ

ゆかり
あ、話終わった?
木佐貫
終わったよ。途中から飽きてたでしょ。コーヒー飲んでくつろいじゃってるし…もう、結構頑張ったんだからね、喋るの。
ゆかり
なんかすごいな~って感じで聞いてた。じゃあまとめは私がするね。
木佐貫
あ、本当? じゃあ最後の仕上げはお願いしちゃおうかな。

ここまでの長~~~~い話を、ゆかりがまとめてくれるそうです。では、まとめを見ていきましょう。

ゆかり
まずはG20について。これは「経済的に強い20ヵ国(うち1つは地域)が集まって、世界経済の成長について議論するもの」。今回はこの20の国々・地域の、転職事情についてみていきました。
ゆかり
木佐貫がとっっっても長い話をしてまとめた20ヵ国の転職事情は、こんな感じでまとめられます。
G20参加国の転職事情

【G7参加国】

  • アメリカ:転職に寛容。18~50歳の間に平均10回以上の転職をするレベル。
  • イギリス:転職に寛容。キャリアアップのために転職しよう!という考え。
  • イタリア:転職に寛容。ただし正規の職にはつきにくい。
  • カナダ:転職に寛容。経験重視で転職するのが多いかも。
  • ドイツ:転職の文化があまりない。教育制度がその理由になる。
  • 日本:転職に比較的寛容になってきた。アジアの中では結構転職する方。
  • フランス:転職に寛容。こちらも経験重視。

【新興国11ヵ国】

  • アルゼンチン:転職しやすい環境。アメリカに引けを取らないレベルの転職回数。
  • インド:転職しやすい環境。1~2年で職をかえる人が多い。
  • インドネシア:離職率が低いので転職文化が薄いかも。給料前払いシステムというユニークなものあり
  • オーストラリア:転職しやすい環境。転職=経験という考え方。
  • 韓国:転職しにくい環境。そもそも就職もわりと厳しいが、今は離職する若者も多い。
  • サウジアラビア:転職しにくい環境。転職しても新しい職を見つけにくい。
  • 中国:転職しやすい環境。IT企業の勤続年数は2年程度でも長い方。
  • トルコ:転職しやすい環境。転職に対するマイナスイメージは薄めかも。
  • ブラジル:転職しやすい環境。人が割とスピーディーに流れる。
  • 南アフリカ:転職しやすいか不明。黒人の売り手市場だが、失業率も高い。
  • メキシコ:転職しやすい環境。転職は当たり前という感覚がありそう。

【その他】

  • ロシア:転職は一般的ではないが、するとしたら大都市が人気。
  • EU:転職には寛容で、比較的転職自体がしやすい。
ゆかり
こんな感じでどうかな?
木佐貫
意外に話を聞いてたみたいでびっくりした。完璧。
ゆかり
うーん、なかなか失礼なこと言うわね。でも完璧ならよかったわ。

今年のG20大阪サミットはすでに終わってしまいましたが、実はその会議に参加していた国や地域は、こんな経済・労働事情を抱えていました。国によって事情はさまざまあって、それを見るのは興味深いですが、それを超えて、国際会議を経た世界の経済が、よりよくなっていくと良いですよね。

それでは、ここまで長い記事を読んでくださってありがとうございました! この記事を読んだあなたが、少しでも面白いなあと思ってくだされば幸いです。

 

 

 

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