失業状態になった労働者を守る制度として、日本には失業保険があるのはご存知かと思います。
実は、失業保険という言葉は正確には存在しません。雇用保険制度の中にある、失業給付で支給される基本手当(失業給付金)のことを指し、わかりやすく失業保険と呼ばれることになったそうです。
この失業保険ですが、年齢制限はなく一定の条件を満たすと65歳以上でも申請できます。これを高年齢求職者給付金といい、64歳以下で受給できる失業保険とは受給期間や制約が異なります。
今回は私の父のケースを元に、65歳以上で受給できる高年齢求職者給付金について、年金との関係も踏まえながら調べたことをまとめました。
こんな方におすすめ
- 65歳以上で受給できる高年齢求職者給付金をざっくり知りたい人
- 年金を収めているけれど、金額や時期を意識したことがない人
- 65歳手前で早期退職して、失業保険をもらったほうが得なんじゃないか悩んでいる人
Contents
65歳からは高年齢求職者給付金が受給できる

先日、妻に頼まれた買い物の帰りに公園を通りかかったのですが、うなだれた父に偶然会いました。
父は60歳まで勤めていた会社を定年退職後、契約社員扱いの再雇用を選択しました。1年ごと更新で4年半を過ぎ、あと3ヶ月で65歳になるというところで、会社から以後契約更新はなしと告げられたそうです。

65歳をむかえる父の職探しに、なんとか希望を持ってほしいと調べ始めたのが今回の記事を書いたきっかけです。
2種類の失業保険をざっくり比べてみた
当時ギリギリ64歳だった父ですが、65歳以降に失業保険を受給できるのか調べてみました。
65歳以降は高年齢求職者給付金を受給することができます。通常の失業保険と何が違うのかわかりやすくするために、ざっくり比べてみました。
大きく違うのは支給日数と、年金との併給ができるかできないかの部分です。
64歳以下 | 65歳以上 | |
失業保険の種類 | 基本手当(雇用保険の失業給付) | 高年齢求職者給付金 |
支給日数(要件による) | 90日〜360日 ※要件詳細はハローワークへ |
30日〜50日 |
支給金額 | 45%〜80%/日 ✕ 日数分の基本手当 ※離職時の年齢・賃金の日額による |
50%〜80%/日 ✕ 日数分の一時金 ※賃金の日額による |
支給条件 |
|
|
支給までの期間 | 待機期間7日を含み約1ヶ月〜4ヶ月 | |
受給期間 | 離職日の翌日から1年間 | |
年金との併給 | ✕ | ○ |
利用回数制限 | 直近で1年以上雇用保険に加入していれば何度でも可 | 直近で6ヶ月以上雇用保険に加入していれば何度でも可 |
参考:厚生労働省、三重県労働局、ハローワークインターネットサービス
通常の失業保険の詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
高年齢求職者給付金受給にあたっての条件ポイント
高年齢求職者給付金受給の条件ポイントをまとめました。
退職理由によって給付制限期間が追加される
給付制限とは、離職理由により失業給付が制限される期間のことです。
通常の失業保険と同様、定年退職・解雇・契約期間の満了を理由に離職する場合は、やむを得ない退職扱いとなり給付制限期間はありません。
自己都合退職、懲戒解雇で離職する場合は3ヶ月間の給付制限期間が追加されます。

引用:ハローワーク情報局
離職日以前の雇用保険加入期間により、支給日数が決定する
雇用保険に加入していた期間が1年以上の場合は50日分支給、6ヶ月以上1年未満は30日分支給となります。
受給までの流れをシミュレーションしてみた
父のケースで、高年齢求職者給付金を受給するまでの流れをシミュレーションしてみました。
- 年齢64歳と9ヶ月
- 60歳で定年退職。退職金を受領
- 定年退職後、契約社員として再雇用。1年ごとの更新(雇用保険には4年と9ヶ月加入)
- 65歳で契約期間満了にて退職予定
【受給までの流れ】
- 65歳で退職後、ハローワークへ求職の申込みをする
退職後、離職票などの必要物を持参してハローワークへ求職の申込みをする
必要書類はこちら
- 7日間の待機期間を過ごす
この間はアルバイトなどの就労は不可 - 契約期間満了による離職のため、給付制限期間はなし
- 指定された日にハローワークに行き、失業の認定を受ける
- 認定日より約5営業日以内に一括(50日分)振り込まれる(1から約1ヶ月程度)
65歳で退職後、ハローワークへ申請することで、約1ヶ月後に50日分の高年齢求職者給付金が支給されることがわかりました。

ふと思ったんじゃが、退職金は60歳で受け取っているし、いっそのこと今すぐ退職して通常の失業保険をもらったほうがお得なんじゃないのか?
64歳で退職して失業保険をもらう方が得という説にNO!

65歳以降は高年齢求職者給付金をもらえることがわかりました。
仮に64歳で退職し、通常の失業保険をもらったほうが得をするかどうか調べてみましたが、結論はNOです。
65歳で退職してもそれ以前に退職しても退職金が変わらない場合は、前倒しで退職して失業保険を受給したほうが若干得になることもありますが、おすすめしません。
理由は下記の通りです。
- 65歳で定年退職の場合、64歳で退職することにより退職金が減額される可能性がある
- 64歳で退職すると、失業保険の申請は自己都合退職扱いとなり3ヶ月間の給付制限が発生する
- 年金は失業保険と併給不可。特別支給の老齢厚生年金を受給している場合、失業保険の給付を受けることで年金の給付がストップする
- 失業保険はそもそも、働く意思があるのに就職先が見つからない人が受ける給付金制度。老後資金に不安があり少しでも収入を得たいのであれば、失業保険をあてにするよりも働けるうちに働いておく方が収入としては多くなる
- 60歳以降は年齢の問題から就職口が少なくなる。失業保険を受給してから働こうと思っても、思うように働き口が見つからない可能性が上がっていく。数カ月間失業保険の給付があるからいいかというと、若い頃とは違ってメリットにならない。
64歳で辞める場合と65歳でやめる場合を計算してみた
父のケースで、65歳で契約満了退職する場合と、64歳9ヶ月で退職して失業保険を受給する場合を比較してみました。
64歳で早期退職すると、収入は半分以下になってしまうことがわかりました。
※就業年数や年齢など、条件によって計算額は異なります。ご自身の場合の金額詳細については、後述の年金相談センターにご相談ください。
65歳で契約満了し退職 | 64歳9ヶ月で自己都合退職 | |
基本月額給料 | 25万円 | 25万円 |
特別支給の老齢厚生年金 | 10万円 | 10万円 |
毎月の在職中の老齢厚生年金(減額後の金額) | 10-(25+10-28)÷2=6.5万円 | 10-(25+10-28)÷2=6.5万円 ※失業保険を申請した1ヶ月後から支給停止 |
失業保険or高年齢求職者給付金支給日数 | 50日分 | 90日分 |
基本手当日額 | 6815円 | 7150円 |
給付制限期間 | なし | 90日間 |
64歳9ヶ月〜の収入合計 (65歳〜もらえる年金は除く) |
(250000+65000)✕4ヶ月+6815✕50日=1,600,750円 | 65000+7150✕90日=708,500円 (3ヶ月間の給付制限があるため、支給は65歳頃から) |
参考:日本年金機構

65歳で退職したら高年齢求職者給付金をもらって、パートでもいいから仕事を探すことにするよ。
悩んだら社労士主催の年金相談センターに相談しよう
年金の手続きで西宮のアクタにある「街角の年金相談センター」に行った。対応したのは女性の社労士さんだったが、テキパキした仕事ぶりで、説明もとても明快。社労士や年金アドバイザーの勉強でこちらも年金の知識は多少あるが、相談者を満足させるこのレベルにはなかなか達しないなと感心した仕事。
— めざせシルバー司法書士 (@seniorlife1019) March 15, 2018
60歳以降は老後の生活資金の要である年金が関わってきますので、失業保険を受給する場合、トータルで結局いくらもらえるかの計算が複雑化してしまうんですね。
早期退職と悩んでいる、年金との兼ね合いで今後の働き方を考えたい方は、社労士が主催している年金相談センターに相談してみましょう。
年金相談センターなのに、失業保険の相談ができるの?と思うかもしれませんが、対応してもらえます。
相談は対面のみとなっていますので、詳しくは公式サイトをご確認ください。

60歳からの年金、これだけは知っておこう

一口に年金と言っても、いくつかの種類があります。
先程の高年齢求職者給付金や失業保険の受給に関わるので、基本的な年金制度についておさえておきましょう。
65歳(退職後)から受給できる年金
65歳から受給できる年金には、老齢基礎年金と、老齢厚生年金があります。
老齢基礎年金は、国民年金や厚生年金保険などに加入して保険料を納めた人が受け取れる年金です。加入期間に応じて年金額が計算されます。
厚生年金の被保険者期間があると、65歳になった時に老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支給されます。
ねんきん定期便を確認することで、年金の受給額を知ることもできます。

年金の受給には、受給開始の3ヶ月程前に年金事務所から届く封書にて手続きが必要です。申請しないと年金はもらえないので注意しましょう。
特別支給の老齢厚生年金は働きながら受給可能な年金
65歳からもらえる老齢厚生年金ですが、条件を満たしている60歳以上の人は特別支給の老齢厚生年金を働きながら受給できます。
特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年の法律改正で厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことで設けられた制度です。支給開始の年齢を段階的に引き上げるために設けられました。
下図のねんきん定期便の例では、63歳から年間123万程度の老齢厚生年金が受給できることになります。
条件についての詳細は、日本年金機構のサイトでご確認ください。

働きすぎると年金がカットされる!?
特別支給の老齢厚生年金は、働きながら受給可能ですが制限があります。
毎月の賃金と年金を合わせて28万を超える場合、年金が一部支給停止となってしまいます。ただし、支給停止となった分は厚生年金に入っていれば増額されます。

参考:日本年金機構
私の父の例だと特別支給の老齢厚生年金が10万円、毎月の給料が25万円で合計35万円となり、28万円をオーバーしました。
金額の調整計算式に当てはめて計算すると、10-(25+10-28)÷2=6.5万円となり、特別支給の老齢厚生年金が10万円から6.5万円に減額となります。(参考:日本年金機構)
しかし失業保険を受給した場合、この特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止となってしまいますので、もらえるだけありがたいですね。

こうしてみると65歳までは賃金と年金、65歳以降は年金を中心に生活ができるような仕組みになっているのじゃね。働かなくてもお金が入ってくるようなウマい話はないのう。

年金の受給に合わせて雇用保険の制度も分けているんだ。
まとめ

- 失業保険(雇用保険の失業給付)に年齢制限はない。65歳以降は高年齢求職者給付金を申請できる
- 64歳で早期退職して失業保険を受給した方が得に感じるが、老後のためにできるかぎり働きたいならおすすめしない
- 年金との兼ね合いや、失業保険の受給のための早期退職で悩んだら社労士主催の年金相談センターへ相談しよう
- 働きながら受給できる特別支給の老齢厚生年金は、失業保険の受給中は支給停止となる。高年齢求職者給付金は老齢年金と併給可能
日本は少子高齢化が進んでおり、ベテランの社員が培ってきた知識や経験を活かしていく仕組みが社会に望まれます。
65歳以上でも高年齢求職者給付金という失業保険を受給できるので、老後の資金確保に活用しましょう。


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